第十三章 告白と婚約と

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『お前は、たぶらかされてるんだ。それが解らんのか? 楠グループの資産目当てに、擦り寄ってきた野良猫にな!』 「瑠衣は、野良猫なんかじゃない」  寿士は、瑠衣の指輪をもう一度、薬指に着けなおした。 「瑠衣は、俺の大切なパートナーだ。いくら父さんでも、それ以上彼を侮辱すると許さないよ」  『寿士、お前はまだ若い。結婚が、人生においてどれほど大切なものか解っていないんだ』 「充分解ってるよ。てか、教えてもらったよ、瑠衣に。恋も愛も結婚の意味も、全部!」 『お前は! 将来楠グループを背負って立つ人間なんだぞ! 子会社、下請けを含めると、何百万、何千万人もの社員の、その家族の人生を背負うんだ。選ばれた人間なんだ。その配偶者も、選び抜かれた人間でなければいかん!』 「俺が選んだ! 瑠衣は、俺が選び抜いた最高のパートナーなんだ!」    父がまだ何かわめいていたが、寿士は一方的に通話を切った。  息を荒げ、しばらくスマホを睨んでいたが、瑠衣の声に我に返った。 「寿士さん、僕……」 「瑠衣、おいで」  寿士は、腕を広げた。
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