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45.波間に立つ
ル クヴォン
アノリ
(カルダモン/マグノリアabs/シダーウッド)
クヴォン デ ミニムというロクシタンの妹ブランドとしてスタート、買収による独立とリブランディングを経て、現在、本作中でも度々名前の登場する調香師ジャン=クロード・エレナ氏が監修するル クヴォン。
良質の香料を使いながらも手の届く値段というコンセプトを掲げ、近年の値上げラッシュの中ではまだ良心的な価格で購入できる、ジェンダーフリーのヴィーガンフレグランスブランドです。
今回のアノリは世界各地への旅をテーマとしたシリーズの一つで、北極海に吹く冷たい風をイメージしたという香りです。
涼し気な爽やかさの中に明るい軽やかさが感じられるためでしょうか、寒冷地仕様の高光にとっては北極圏の夏の朝の印象だったりします。短い北極圏の夏、潮風、海岸近くで揺れる小さな白い花——そんなイメージです。
アクアティックな香りは湿度のイメージが強く案外真夏には不向きで、近年のマリンは潮のイメージが強く好みが別れる場合も多いのですが、アノリは夏でも使いやすいほんのりマリン。もし興味と機会があれば、試していただきたいと思います。
今回の掌編は、ジョー マローンのウッドセージ&シーソルトのイメージから創作した一番最初の作品である『寄る辺なく漂う』の、夫側視点となります。
曇天の冬の海なウッドセージ&シーソルトに対して、アノリは晴天の極地の夏の海。
潮風マリンでループさせたいという意図があったことから、香りの印象を考慮し『前向きなのに寂寥感のある妻』と『失意の中に救いを見出す夫』という構図になりました。
さて、今回を持って掌編集『沈黙の言葉が溢れたら』本編は最後となります。
本当は50作まで書きたかったのですが、リアル状況の変化と30作で一度締めていることを考えるとそろそろかなという思いがあり、今回で終えることにしました。
まだまだ書きたい香りはあるけれど、どうしてもという一つだけを今後スター特典として公開し、そこで完結設定する予定です。
これまでご覧くださった皆様、本当にありがとうございました。あと一編お付き合いくださると幸いです。
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