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その5
その5
静人
でも、涼しげな眼もとだった
まあ、寝不足とかで疲れてるんだろう
次の瞬間、彼女はちょっと笑った…、笑顔もかわいいや
「おい、静人、チャンスじゃねえか。あの子、店でたらお前も出て、話して来い。一気にが無理なら、次アポとれ。頑張れよ」
隣にいる身長180センチを超える、”元”柔道部の中退組先輩がはっぱをかけてきた
”よし、ここ逃す手はない!”
俺はシュミレーションに没頭した
それからおよそ15分くらいすると、彼女は俺たちの横を”闊歩”してレジに向かった
「よし、静人、しっかりな。期待してるからな!」
そう言ったのは、中退組で一番モテそうもないチビの先輩だった
...
俺は、彼女が店を出る直前に席を立った
店の外に出た俺は彼女に声をかけた
ちょうど、単車の前でヘルメットに手をかけてたところだった
「あのー、さっきはみっともないとこ見せちゃって…、いつもあそこ座ってますよね?」
「あんた達だって、いつもあそこじゃない」
「あっ、俺たちのこと、気づいてくれてたんですか?」
「いつも私見てたでしょ?代わりばんこで…」
わあー、知ってたのか…、この子、結構したたかだ
「ええ、まあ。何とか声かけたいって思ってたんですけど、なかなかきっかけがなくて…」
「じゃあ、さっきのがきっかけね?聞きたいことあるなら聞いてみたら?」
話が結構スムーズだ…、よし、聞いてやれ!
「あ、じゃあまず名前教えてください。俺は静人です。高1です」
とりあえず中退は省略だ
...
「麻衣よ。高2」
「先輩ですね、いっこ。あの、それで、南玉の走りの方の人ですか?ひょっとして」
「うん、でも正確には元ね」
「そうですか…。いやー、すげえな…。俺たち、所詮原チャリなんで、はは…」
「それで?せっかくきっかけできたのに、それだけ?」
この人、矢継ぎ早だな…、切れ者っぽいや
「いや、あの、どうですか?今度また会って…、できれば、中の3人も一緒でどっかとか…」
瞬間、眼が鋭く光った気がした。なんとなくだけど…
「条件、クリアできるんならOKよ。3人まとめて面倒見るわ。当然、あなた”優先”で。”リッチネル”の割引持ってんのよ、私」
”リッチネル”だって?ラブホテルじゃないか!この辺りじゃ、とびきりの上部屋だぞ!
...
「ああ、あの…、やれることなら何でもやりますけど、一体何ですかね?」
「そんなあやふやじゃ、ダメね。やれるの?気合い入れて答えて」
さすが、南玉レディースのOGだ…
「ああ、やれます!何でも…」
「そう。あのね、宿題よ、夏休みの。さっきから店でやってたんだけど、終わりそうもないのよ。どう?31日までにやってくれる?」
はー?ガクッときた。南玉のアネゴが宿題かよ、夏休みの
「宿題ですか?なんの教科ですか?量は多いんですか?」
「アンタ、細かいわね。無理ならいいわ、帰るから」
結構短気だ…
「いや、待ってください。中の連中にも手伝わせて、絶対やります。だから、リッチネル頼みますよ。彼らもそれ言ったら必死にやりますよ…」
「そう、良かったわ。じゃあ、今出すわ」
そういうと、麻衣さんはバイクから本とかノートを取り出した
「はい、これね。まあ、今夜から徹夜すれば何とかでしょ」
おい、マジかよ!パッと見てもこの量、半端じゃないぞ!
英訳に読書感想文に問題集…、とても2,3日じゃ終わらせられるもんかよ
「じゃあ31日の昼、12時ちょうどにね。店の中じゃなくてこの駐車場で待ち合わせよ。ここで、その”宿題の山”受け取るわ。”クリア”なら、おいしいランチ一緒に食べて、”リッチ”行きましょ。5人で仲良くね」
まあ、ここは安請け合いして、後でみんなと相談だ
「それから、私、”目の前”突破できないヘタレた男、大嫌いなんで。中の3人にもよく言ってちょうだいね。まかり間違っても、”NG”なんてないように。念のため言っとくわ」
どういう意味だ?まあいいか…
そう言って、彼女はバイクの轟音と共にあっという間に走り去った
...
「おい!リッチネルとはスゲエな!よし、31日は4人一斉だ。ハハハ、静人、良くやったな」
早速3人に報告すると、みんなすっかり舞い上がっちゃった
「でも、どうします?この宿題、4人で手分けしても終わらないでょ?」
「そんなの適当でいいよ。当日できなかったって渡して、飯でもおごってやって、それでリッチネルだよ!」
元柔道部の先輩は、もうリッチネルで頭がいっぱいのようだ
「結構プレッシャーかける言いっぷりだったけど…。大丈夫かな…」
「関係ねえよ、その場でどうにでもなるさ。それにしても楽しみだな、ハハハ」
一応、彼女から預かった宿題は4等分して、持ち帰ることにした
まあ、みんな最初の何ページかを埋めて、終わりだろうけど…
さあ、8月31日か…
楽しみができたぞ
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