その8

1/1
前へ
/20ページ
次へ

その8

その8 アキラ 翌朝の10時ちょっと前、麻衣のアパートに着いた 1階にあるその部屋は、既に玄関ドアが開いていた 「本郷さんの部屋で、よろしいですか?」 一応、部屋の中に向かって声を掛けた 「アキラさん?どうぞ、入って」 部屋の奥から、麻衣の声がした オレは部屋に入った 殺風景だが、きちんと片付いていて、割ときれいだ 想像では、もっと荒れた感じの部屋かなって思っていたが… 「どう?やつれたでしょ」 あれからさほど経っていないが、たしかに頬は明らかにこけてる 「だけど、予想してた程じゃないな。がっかりだよ、お前の七転八倒見れなくて」 オレは挑発気味に言った ... 麻衣はニヤニヤしながら立ち上がり、冷蔵庫の麦茶をグラスに入れて持ってきた 「これしかなくて、飲んで。…、気になってると思うから先、言っとくわ。おけいには最低限で話したわ。で、納得させてね。フフ、あなたに相当、熱ね。結構”元気”あったから、まあ大丈夫よ」 ケイコちゃんには”監禁”のことは言ったんだろう… クソッ、早く会ってきちっと話したいよ 「それでね、タイムリミットなのよ、いよいよ。意味わかる?」 「ああ、そろそろと思ってたからな。俺はどうすればいいんだ?」 「接触があるわ、向こうから。あなたも承知のとおり、いつも近くにいるから、先方。指示が出るわ。それ待ってて。簡単でしょ?」 麻衣はこう言いながら、オレの右隣に座った 肩が触れ合うくらい、体を寄せてきてる 「だからさ、私の苦しむ姿、お見せできなくなっちゃった。埋め合わせはどうしようか?」 こいつ、早速、”仕掛けて”きた… ここは用心だ、何企んでるかわからない、毎度のことだが 「あの時、私を襲おうと思ったんでしょ、あなた。でも勇気なかった。今はどうなの?」 「罠だと知って、その気になるかよ。お前みたいな子供、抱いたってしようがないしな」 今日のオレは、どうもこんな感じになってしまう しかし、麻衣は表情一つ変えず、俺の目をじっと見つめてる 何考えてるんだか、こいつだけはさっぱりわからない 「あなた、おけいともまだやってないでしょ?ペチャだけど、中々よかったよ、あの子。アレの時、結構燃えるタイプかな…」 はー?何言ってんだ、麻衣は ... 「例の副作用か?アタマ大丈夫かよ、お前、言ってる意味さっぱりだぞ」 すると、麻衣は髪の毛を両手で捲し上げて、一度うつむいた で…、笑いをこらえるような顔つきで、再び俺の方を向いた 「単純明快だよ。おけと私、ヤッたってこと。しかも二人ともイッたし。ハハハ…、子供同士でゴメンねだよな…」 ウソだろ?とりあえずそうとしか思えなかったし、思いたくもない 麻衣は、あっけにとられてる俺の右手を握ってきた 視線はじっとオレの目を見据えたままだ 「今日、あなたを呼んだのは、あの時の埋め合わせもなのよ。あなたの未来を奪った憎い小娘はさ、あなたの愛する女の体も奪ってたって訳…。まあその時、誘ってきたのはアイツの方だけどね…。さあ、どうするの?」 麻衣…、 コイツ、どこまでオレを追い込む気なんだよ…
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加