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その8
その8
アキラ
翌朝の10時ちょっと前、麻衣のアパートに着いた
1階にあるその部屋は、既に玄関ドアが開いていた
「本郷さんの部屋で、よろしいですか?」
一応、部屋の中に向かって声を掛けた
「アキラさん?どうぞ、入って」
部屋の奥から、麻衣の声がした
オレは部屋に入った
殺風景だが、きちんと片付いていて、割ときれいだ
想像では、もっと荒れた感じの部屋かなって思っていたが…
「どう?やつれたでしょ」
あれからさほど経っていないが、たしかに頬は明らかにこけてる
「だけど、予想してた程じゃないな。がっかりだよ、お前の七転八倒見れなくて」
オレは挑発気味に言った
...
麻衣はニヤニヤしながら立ち上がり、冷蔵庫の麦茶をグラスに入れて持ってきた
「これしかなくて、飲んで。…、気になってると思うから先、言っとくわ。おけいには最低限で話したわ。で、納得させてね。フフ、あなたに相当、熱ね。結構”元気”あったから、まあ大丈夫よ」
ケイコちゃんには”監禁”のことは言ったんだろう…
クソッ、早く会ってきちっと話したいよ
「それでね、タイムリミットなのよ、いよいよ。意味わかる?」
「ああ、そろそろと思ってたからな。俺はどうすればいいんだ?」
「接触があるわ、向こうから。あなたも承知のとおり、いつも近くにいるから、先方。指示が出るわ。それ待ってて。簡単でしょ?」
麻衣はこう言いながら、オレの右隣に座った
肩が触れ合うくらい、体を寄せてきてる
「だからさ、私の苦しむ姿、お見せできなくなっちゃった。埋め合わせはどうしようか?」
こいつ、早速、”仕掛けて”きた…
ここは用心だ、何企んでるかわからない、毎度のことだが
「あの時、私を襲おうと思ったんでしょ、あなた。でも勇気なかった。今はどうなの?」
「罠だと知って、その気になるかよ。お前みたいな子供、抱いたってしようがないしな」
今日のオレは、どうもこんな感じになってしまう
しかし、麻衣は表情一つ変えず、俺の目をじっと見つめてる
何考えてるんだか、こいつだけはさっぱりわからない
「あなた、おけいともまだやってないでしょ?ペチャだけど、中々よかったよ、あの子。アレの時、結構燃えるタイプかな…」
はー?何言ってんだ、麻衣は
...
「例の副作用か?アタマ大丈夫かよ、お前、言ってる意味さっぱりだぞ」
すると、麻衣は髪の毛を両手で捲し上げて、一度うつむいた
で…、笑いをこらえるような顔つきで、再び俺の方を向いた
「単純明快だよ。おけと私、ヤッたってこと。しかも二人ともイッたし。ハハハ…、子供同士でゴメンねだよな…」
ウソだろ?とりあえずそうとしか思えなかったし、思いたくもない
麻衣は、あっけにとられてる俺の右手を握ってきた
視線はじっとオレの目を見据えたままだ
「今日、あなたを呼んだのは、あの時の埋め合わせもなのよ。あなたの未来を奪った憎い小娘はさ、あなたの愛する女の体も奪ってたって訳…。まあその時、誘ってきたのはアイツの方だけどね…。さあ、どうするの?」
麻衣…、
コイツ、どこまでオレを追い込む気なんだよ…
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