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その11
その11
麻衣
私はファミレスの入り口に向かって、全速疾走した
「このアマア、ふざけやがって…」
ださいセリフ口にしながら、ウドの大木が追っかけてくる
どすどすと、音を立てて…、この脂ぎったイノシシめ!
チビと長髪も、こっちに向かってきたようだ
おっとり刀で、イノシシのしっぽか、お前ら!
店内に駆け込んだ私は、「ギャー!ワー!」と、さっきのウドの大木と同じフレーズで絶叫だ
当然、店内騒然、みんな何事かと一斉にこっち、注目してる
店の入り口で順番待ってた親子連れは、そそくさと帰っちゃった
私は、まっしぐらで、店の中央へ走って行く
そして、料理を運んでいる店員に勢いよくぶつかってやった
「キャーッ」という悲鳴とともに、料理はよろけた店員の手を離れ、数メートル先に吹っ飛んでった
ガシャーンと音をたて、割れた皿と料理は床に散乱した
最中、その脇に転がったフォークを、私は見逃さなかった
私は”そこ”に移動し、”そこ”で立ち止まった
この時点で、フォークはしっかり私の靴の下で”待機”となってる
...
言うまでもなく、既にランチタイムの店内はもうパニック状態だ
すぐに、3人は私の目の前に息を荒げてやってきた
どうやら私に突進してくるのは、ウドの大木、1人のようだ
興奮状態のコイツ、私の服掴むと、体落としをかけてきたわ
でもさ…、投げられてる瞬間もフォークの居場所、しっかり目離さなかったよ、私
受け身もわりと適格にとれたし…
イノシシのコイツ、投げ倒した私を仰向けにすると、定番の馬乗りにきたよ
同時に、私の首と肩の間、両手で押さえつけてきた
さすがに重いわ、腹の出たイノシシは
まあ、いざとなったら、フォークの出番だ
ともあれ、遠目からなら、私の首絞めてるように見えるだろう
フフフ…、もう台本通りの役、しっかりこなしてくれてるわ、コイツ
...
ここで私はセリフだ
「助けてー!警察呼んで-!ワー!コイツ、やめろー!」
猿芝居には慣れてるから、結構迫真だったと思う…
さすがに、興奮状態のウド野郎も周りを見回して、状況が分かりかけたみたいだ
他の2人は少し離れたところで、オタオタしてるわ
もうこうなると、店は警察呼ぶし、現場のお客も”立会い人”そして”証人”ということだ
私を押さえつけてる力が少し緩んだところで、目下、私のケツの下に潜り込んでるフォークを右手でつかんだ
私は更に体を激しくジタバタさせ、再びヤツが力を入れたその瞬間、”チクッ”とやってやった
たぶん、右の太ももあたりかな
「ギャー!」
その悲鳴と同時に私の体を離し、店の床で太もも押さえて騒いでる
このイノシシ、大げさだわ…
ジーパンの上からで、血、出るほど刺せないっての!
...
私が立ち上がると、店の人が、「大丈夫ですか?とりあえず、奥へ…」と言って、私を支えながら店の奥へ連れて行ってくれた
他の2人はもう外に出てて、高1と一緒に血の気の引いた顔してる
私、外の窓越しに、高1と視線が合ったから、ニタッと笑ってやった
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