その4

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その4

その4 静人 中央通り沿いのファミレス、今はランチ時でほぼ満席だ 俺の視線の先は、斜め2つ先のテーブルにいる女性 女性と言っても、おそらく高校生だろう 高校中退の俺と大して変わらない…、と思う 4人掛けの席にいつも一人だ 彼女のお気に入りの席は、窓際とか端ではなく、店の真ん中付近だ 彼女は大抵、遅い午前にそこの席を確保している そのあと、ランチ食ってしばらくいる 食べてる時以外は、だいたいは考え事してるみたいだった ... 俺はグループの4人組で、その人目当てで、この時間帯に来るようになった かれこれ3か月かな… その間、いろいろ発見があった バイクのナンバーも見たが、おそらく南玉連合の”走り”の人みたいだ 髪はかろうじてショートで、少し染めてる ここへ入ってきて、席まで歩く姿はとびっきりかっこいい あの人、歩くというよりは”闊歩”という感じで悠々だ ややがに股で、大股…、俺らの脇を通るといい匂いがする ただ、奇行というか様子にムラがある 腕組みして眠ってるかと思えば、いきなり起きて、ブツブツ独り言呟いてたり… 大汗かいてるのも何度か見てる ランチも一気に勢いよく食べてる時もあれば、スプーンで料理をいじるだけで、ほとんど口にしないこともある ... 俺たちは、4人でここの席からいつも彼女を眺めている と言っても、彼女見れるのは一方向、2人だ だから毎回交代って訳で… 更に俺たちはルールを決めた 彼女に向かってる側の一人が、彼女を見続ける そしてその間、他の3人は会話を弾ませる これを順番、交代で粘りつよく継続する 誰か、彼女と接触できても抜け駆けせず、全員で”好機”は共有する もし、ヤレル機会が訪れたら、4人全員で”分配”だ…、へへへ… 仮に一斉にってことになったら、順番はジャンケンでってことまで決めた で、今日はオレが視線送る順番だ 俺よりいっこ上の中退組3人は、結構大声でくだらない話、連発だ まあ、これも計算ずくで、少しでもこっち向かせる誘いってやつだ なにしろこの昼時だ、何かとガヤガヤ騒がしい店内だし ... 彼女、今日は珍しく本を広げてるわ… しかも鉛筆持ってるし… どう見ても勉強してるって感じだわ 自然に視線釘付けになってたら、彼女、おもむろに顔を上げた 大きく両手を上げて、背伸びして…、大あくびだ 俺、思わずくすっと笑って、手にしてたコーヒーこぼした ちょうど、通りがかったウエイトレスさんが気が付いた 「お客様、大丈夫ですか?」 ほんの少しこぼしただけだったが、反射的に立ち上がって、「ああ、大丈夫みたいです。すいません」と言った 周りはみんなこっち向いてる さすがに、声が聞こえたのか、彼女も俺の方をじっと見てる 初めて視線が合った…、俺もじっと見つめた 整った顔立ちで、きりっとしてるけど… 心なしか目はくぼんでるような、やつれてるような…
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