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ぼくはママのドレッサーの引き出しから、こっそり『イモルテル』の小瓶を抜き取った。そして、理科実験キットから取ってきた試験管に、気づかれないように半分くらい移した。
ガレージに行って、仔猫にスポイトでミルクを飲ませる。ちょっとずつならなんとか飲んでくれるようになったんだけど。仔猫がペロペロしている間、『イモルテル』をまっくろな毛皮に塗り込む。すごくきれいな毛並みになった、まるで黒豹みたいに!
それから毎日、仔猫にオイルを塗った。元気になったら、いっしょに遊ぶんだ!
ぼくの誕生日にパパが帰ってくる。
どうしよう、ガレージに車が入ったら、排気ガスで仔猫が死んじゃうかもしれないし、にゃあにゃあ鳴いたらばれちゃう。パパが帰る前にママに打ち明けるしかない。
学校から帰って、真っ先にガレージに行った。静かだった。寝てるのかな?
そこにはラジコンカーの箱がポツンとあるだけだった。ベッドにしていた小さなタオルがくしゃくしゃになっていた。
仔猫はいなかった。仔猫は少し歩けるようになってたから、どっかに行ってしまったのかもしれない。ラジコンカーの箱はオイルでベトベト、ママのいい匂い、『イモルテル』の匂いが残っていた。
ガレージを出て仔猫を探した。クンクン匂いを嗅いでみたけど、ママのオイルの匂いはしない。仔猫はどこにもいなかった。まだ遠くまで歩くなんて無理だ。ママ猫が戻ってきて連れてったのじゃなければ、ノラ犬かカラスにやられちゃったのだろう。
いっしょに遊びたかったのに。運動靴のつまさきに、涙がポツンとシミを作った。
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