プロローグ

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豚ダブルにしたのは正解だった。ここの店舗は元々神豚だと言われていたが、ダブルにしたからだろうかなんと端豚(はしぶた)が二枚入っていた。端豚とはチャーシューの端っこの部分で味がしみていて柔らかくとにかく最高なのだ。大量の神豚に思わず合掌した。 アーメンではなくこれはラーメンなのだが。 「頂きます!」 ふんだんに盛られた豚。さらにマシた事でより立派になったもやしの山が形成されその上にはアブラが雪景色のように掛かっていた。その(ふもと)に小さなニンニクの山も鎮座していた。。これは食べなくてもうまいと想像できた。とりあえずこのままでは天地返しも難しく麺との対面も済ませたいところなのでアブラのかかったもやしを頬張った。 「うまい!そして甘い!それでいてなおうまい!」 アブラの甘みがクタクタに茹でられたもやしを覆い例えようのない旨味を味あわせてくれた。お次は豚を頬張ってみる。 「やばいね」 脳がそう理解する前に声に出していた。 とにかくやばかった。故にやばくもうそれしか言えなかった。口に入れるとほろほろと崩れ旨味が口いっぱいに広がりアブラ身の部分は口に入れた瞬間にとろけそれはそれでとても美味しくそれが神豚たる所以だと確信せざる終えなかった。 ある程度食べ進めると麺が見えた。 「こ、これは!?」 平打ちの太麺がアブラでひかり輝いていた。これは啜らずにはいられない。思いっきり麺をすすりあげるとオーシャンの香りと口いっぱいの小麦感が幸福度を一時的に高騰させて、それはもうしあわせの四文字以外で表す事は不可能。どれだけ優れた文学博士でもきっとお手上げだろう。 ヤサイ→麺→神豚→麺→神豚→ヤサイ→麺と順不同で食べ進め、ものの十分で完食した。平らげたどんぶりをカウンターに乗せ雑巾で机を綺麗にして店を出た。 「ご馳走様でした。美味しかったです」 きっとこの店には今後もお世話になるだろう。そんな事を考えながら帰路に着いた。実際それからこのお店には足繁く通う事になる。 「今日は濃い一日だった」 そう呟いた俺は、これから過ごす事になる濃密な時を想像すらしていなかった。しかしそれはまだ先の話である。 この日の俺はやけに感情的だったなと思う
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