【Summer Season】 初夏の再会 7

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【Summer Season】 初夏の再会 7

 來川さんの腕まくりした前腕……    そこに垂れるアイスを、しずくくんが必死に舌で追いかけだしたのだ。 「しっ、しずく──」 「だって、宗くんの服が汚れちゃいます!」  冷静沈着な彼の頬が、うっすら赤く染まる。  いやいや……それは、そうなるだろう。  愛しい彼に、そんな風に世話焼かれるなんて。  いつも世話を焼いているのに……その立場をくるっと逆転され、戸惑って、動揺しているのが伝わってくる。 「あの…嫌でしたか」 「いやっ……嫌ではないがっ」  うわっ──なんて初々しい会話なんだ!  俺と瑞樹にもあんな時期があったような。 「パパ。もしかしてボクがぺろぺろするよりも、お兄ちゃんにしてもらいたかったんじゃない?」  う……息子よ……するどいな!   「宗吾さんっ、嫌ですよ。僕はしませんよ」 「瑞樹ぃ……」 「またその声……」  瑞樹はソフトクリームを食べ終えて、楚々とした表情で芝生に座っていたのに、慌てて後ろにずり下がった。  それでいて、耳まで赤くして、ちらちらと俺を伺っている。 「分かっているよ。大人だもんな……俺たちはさ」  俺の手元に垂れてべとべとになったソフトクリームを仕方がないので、ハンドタオルで拭こうと思った時、瑞樹がすっと顔を近づけて、ぺろっと一度だけ舐めてくれた。 「みっ瑞樹っ──」 「はぁ~美味しかったです! ご馳走さまでした!」  しずくくんが絶妙なタイミングで、そんな事を言うので、俺たちは顔を見合わせて笑ってしまった。 「え?俺……なんか変でしたっ?」 「いや、しずく、大丈夫だ。可愛かったよ」 「宗一郎さん……俺、やっぱり変でしたか」 「君って人は……はぁ、独り占めしたくなるよ」  甘いなぁ……いいな。  瑞樹をちらっと見ると、瑞樹も俺と同じ表情を浮かべて、甘く微笑んでいた。  きっと今夜は、沢山甘えてくれそうだ。楽しみだ!  
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