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【Autumn Season】 秋まつりデート 2
「來川先生、お疲れ様でした」
「あぁ」
連載の打ち合わせと打ち上げを兼ねて、久しぶりに夜の飲み会に参加した。
レジで会計を待っていると、カウンター横の色鮮やかなチラシが目に留まった。関心を持って眺めていると「週末に秋祭りがありますので、よかったらぜひいらして下さい」と、愛想のいい店員がチラシをくれた。
『秋まつり』か。
季節はいつの間にか、実りの秋を迎えていた。
夏はお互いに仕事が忙く、マンションに籠ってばかりだった。そもそも、しずくは暑さに弱いし人混みも苦手なので『夏まつり』に連れて行くという発想はなかったが、『秋まつり』なら……どうだろう?
真夏と違って涼しいので、例えば浴衣でも、歩きやすいのでは。
せっかくしずくと暮らしているのに、恋人らしいことがあまり出来ていなかった。だから……どこかに連れて行ってやりたかった。
そんな想いが、急激に膨れ上がってしまった。
それにしても、しずくの浴衣姿を見てみたい。
色素の薄い彼には、何色の浴衣が似合うだろう。長めの髪を襟足が綺麗に見えるように結い上げてやりたいし、華奢な素足に真新しい下駄を履かせてみたい。
カランカランと下駄の音を立てる浴衣姿のしずくと、夜店を巡るのを想像するだけでも楽しい気分になってしまった。
これはぜひ実行したいと、その足でデパートに向かった。
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