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【Autumn Season】 秋まつりデート 4
「宗一郎さん、あの…これって?」
「ん…君に似合いそうだと思ってね」
土曜日の夕方、仕事を終えてソファで寛いでいたしずくの膝に、デパートで購入した浴衣を置いてやると、一瞬ポカンとし……その後、面映ゆそうに睫毛を揺らしてくれた。
「えっと浴衣ですよね……これって」
「そうだ。着付けの動画があるが、ひとりで着られそうか」
「ぅ……かなり難しそうです」
「おいで、私が着せてあげよう」
「あっ、はい…」
しずくの華奢な躰には、淡い色の浴衣がよく似合っていた。白地に菫色の麻の葉模様を選んで正解だったな。
「これで大丈夫だと思うが」
「あ、はい…浴衣なんて着慣れていないので、緊張します、大丈夫でしょうか」
「よく似合っているよ。浴衣姿の君と一緒に歩けるのが、私は嬉しい」
「宗一郎さん……ありがとうございます」
私も浴衣の着付けは初体験だったが、なんとか出来て安堵した。
しずくは嬉しそうに何度も鏡を見ては、頬を赤らめていた。
「そうだ、髪を結わこう。さぁ、おいで」
「はい…っ」
しずくの長い髪をかき上げて首筋を晒し、一つに束ねてやった。
先日、彼のうなじに残した噛み痕は、もう消えていた。
残念なような、よかったような……
「よし、これで良いな。では行こうか」
「え……? あの、どこへですか」
「決まっているだろう。浴衣を着たのだから」
「あ、もしかして……おまつりに?」
「そうだ」
そう答えると、しずくはふにゃっと頬を緩め、満面の笑みを浮かべてくれた。
「わぁ……っ、嬉しいです! そうくん……」
私の胸元に、ふわりと飛び込んで来てくれる華奢な身体。その無防備なうなじに噛みつきたくなるのを、ぐっと我慢し、その代わり彼の首筋を唇ですっと撫でた。
「ん……っ、擽ったい……、ぁ」
「すまない、出かけられなくなるな」
「……っ、もう」
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