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【rainy season】 出逢い 4
「な、な、何を言って?」
そんな無防備に、初対面の相手に大丈夫ですかと目で訴えるが、宗吾さんは余裕の笑みだった。
もうっ、人の気も知らないで──
あれ? 隣の彼も顔を真っ赤に染め上げているな。この反応って……もしかして? いやまさかな。世間では、普通、僕たちみたいな関係は珍しいのだから。
「瑞樹、俺の同棲相手の話を聞きたいか」
「うっ……」
「俺の大切な人は、可憐で可愛くて草原が似合う子だ」
面と向かって言われるのは、猛烈に恥ずかしい。
すると隣の男性も負けじと……
「……私の大切な子は、雨上がりの雫のように透明感があって心まで綺麗だ」
「あの…っ、けほ…っ」
「あっ、しずくはそれ以上飲むな」
「で……もっ、宗一郎さんっ…」
隣の彼もかなり動揺している。
結局……その日はビールが美味しくて、かなり飲んでしまい、僕もふらふらだ。隣の二人の雰囲気が素敵だったからなのか、会話も弾んで(ほぼ宗吾さんがリードしたが)突然の飲み会は大いに盛り上がった。
「しずく…っ、大丈夫か」
「ごめん、なさい」
「すみません……彼が酔ってしまったようなので、そろそろ」
「あっそうですね、じゃあお勘定を」
皆で席を立つ時に、しずくくんが突然舌足らずな甘えた声で『宗くん…待って』と口にした。その甘えた口調があまりに幼く可愛くて、つい芽生くんを思い出し、微笑んでしまった。
すると宗吾さんも甘えた声を出す。
嫌な予感……っ
「瑞樹ぃ……いいよなぁ」
「な、なんですか」
「俺もさぁ……あんな風に可愛く呼ばれてみたい」
「えぇっ」
僕は『滝沢さん』から『宗吾さん』に変化させたので精一杯だ、だからそんな呼び方は無理だ……照れ臭い!
「駄目か」
「うっ」
「いつものお願いよりは、かなりハードル低いと思うが」
「うっ……それを言われると」
「それとも、もっとハードルが高いお願いにするか」
隣では『宗くん…しずく、まだここにいたい』と甘えた声が聴こえる。
宗吾さんがますます期待に満ちた目で僕を見る。
あぁ僕は、この目に弱いんだ!
惚れた弱みだ、絶対に!
「瑞樹、呼んでくれ」
「そ、そ……わぁ、やっぱり照れますよ」
するとしずくくんがふにゃっと笑いながら、助け舟?を出してくれた。
「大丈夫ですよ。俺と一緒に…せーのっで、言いましょう!」
えっそこ? しずくくんは可愛いけど、かなり天然だ!!
「じゃあ。せーのっ」
「宗くん」
「……そ……う……くん」
あぁ……もうっ駄目だ。照れくさい。
でも宗吾さんはすごくすごく嬉しそうだ。
「瑞樹、ありがとうな。新鮮だよ。これからは、たまに呼んでくれ!」
「う……今日のは特別ですよ」
「最近の君はあまり甘えてくれないから、寂しいんだよ」
「うっ」
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