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ふう……。
私は目を閉じてぼーっとしていた。お兄ちゃんも私の身体の上で力尽きていた。まだ私の心臓がドキドキしていた。
お兄ちゃんもドキドキしているのかな。
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深夜、お兄ちゃんは寝息を立てていた。
身体を起こす。ジーンとまだお兄ちゃんの余韻が残った場所を指先で確かめる。
胸がキュンとした。
お兄ちゃんのほっぺにキスをする。
複雑な香りが混じったベッドの脇のくずかごには、ティッシュペーパーが……。私の身体を拭ってくれたんだ。
中に丁寧に括られたコンドームがティッシュペーパーに包まれていた。中には並々と溜まったお兄ちゃんから出たあの白いモノが……。
ちゃんと使ってくれたんだ。お兄ちゃん……。
午前三時十六分。私たちはホテルを出た。腕を組んで……。
ほとんど、人通りのない商店街を腕を組んで歩く。カツカツと私のハイヒールの音が響いている。
「夏芽……?」
「はい……」
「知ってる、姫初め……?」
「知ってるよ。その年、最初のエッチでしょ?」
「姫初め……、その年に、いいことも、あるらしいよ」
「だけどさ、お兄ちゃん……]
誘導尋問……?
「うん?」
「誰でも、最初にするエッチが姫初めなら、みんなにいいことがあるね?」
「…………そっか? …………だよな」って言いながらお兄ちゃんは白い歯を見せた。
じゃあ、私も幸せになれるね? だって……。
「でもさ……、ありがとう……お兄ちゃん……」
声が少しかすれる。点滅する信号が滲んで見えた。
「いや、お前が幸せになってくれたら……なんて……」
「幸せになるよ。私……」
「夏芽、おめでとう……」
お兄ちゃんの声もかすれていた。
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『夏芽はねえ、大きくなったらお兄ちゃんのお嫁さんになるの……』
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「じゃあ、俺たちは恋人解消……な?」
「うん……」
「急ごう。母さんたち、血相変えて探してるよ」
「怒られるかな?」
「たぶんな」
「嫌だな……怒られるの」
「大丈夫、俺が守ってやるから……」
「うん、……」
「ふふふ……たぶんな」
「お兄ちゃんっ……」
私たちはじゃれるように家に帰った。
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その日の午後ニ時、私はバージンロードを歩いていた。
――おわり――
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