私の結婚式前夜

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11 : : :  ふう……。  私は目を閉じてぼーっとしていた。お兄ちゃんも私の身体の上で力尽きていた。まだ私の心臓がドキドキしていた。  お兄ちゃんもドキドキしているのかな。 : :  深夜、お兄ちゃんは寝息を立てていた。  身体を起こす。ジーンとまだお兄ちゃんの余韻が残った場所を指先で確かめる。  胸がキュンとした。  お兄ちゃんのほっぺにキスをする。  複雑な香りが混じったベッドの脇のくずかごには、ティッシュペーパーが……。私の身体を拭ってくれたんだ。  中に丁寧に括られたコンドームがティッシュペーパーに包まれていた。中には並々と溜まったお兄ちゃんから出たあの白いモノが……。  ちゃんと使ってくれたんだ。お兄ちゃん……。 午前三時十六分。私たちはホテルを出た。腕を組んで……。  ほとんど、人通りのない商店街を腕を組んで歩く。カツカツと私のハイヒールの音が響いている。 「夏芽……?」 「はい……」 「知ってる、姫初め……?」 「知ってるよ。その年、最初のエッチでしょ?」 「姫初め……、その年に、いいことも、あるらしいよ」 「だけどさ、お兄ちゃん……]  誘導尋問……? 「うん?」 「誰でも、最初にするエッチが姫初めなら、みんなにいいことがあるね?」 「…………そっか? …………だよな」って言いながらお兄ちゃんは白い歯を見せた。  じゃあ、私も幸せになれるね? だって……。 「でもさ……、ありがとう……お兄ちゃん……」  声が少しかすれる。点滅する信号が滲んで見えた。 「いや、お前が幸せになってくれたら……なんて……」 「幸せになるよ。私……」 「夏芽、おめでとう……」  お兄ちゃんの声もかすれていた。 : : : 『夏芽はねえ、大きくなったらお兄ちゃんのお嫁さんになるの……』 : : : 「じゃあ、俺たちは恋人解消……な?」 「うん……」 「急ごう。母さんたち、血相変えて探してるよ」 「怒られるかな?」 「たぶんな」 「嫌だな……怒られるの」 「大丈夫、俺が守ってやるから……」 「うん、……」 「ふふふ……たぶんな」 「お兄ちゃんっ……」  私たちはじゃれるように家に帰った。 : :  その日の午後ニ時、私はバージンロードを歩いていた。 ――おわり――
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