閃光

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「今朝、ジープから降りて俺を見た時からずっと、俺に敵意を剥き出しにしていたな。最初は俺も理由が解らなかったが、おまえの顔を見ているうちに理解した」  何を言い出すつもりだ……何を理解したというのだ……私の何が解る! 「おまえのは敵意じゃなく、嫉妬だ。俺みたいな冴えない男が、英雄だのなんだのとちやほやされているのが気に食わないんだろう。もちろんおまえは何も喋っちゃいない。だがな、おまえの顔にしっかりと書いてあった」  違う。嫉妬など……そんなつまらない感情ではない。私は思いきり眉を寄せ、凛音を睨み付けた。 「おまえが欲しい称号は何だ。精鋭中の精鋭か。この国きっての英雄か。それとも全部か。俺を殺せば、そうした称号がすべて自分のものになると思ったのか」  凛音の表情も、声音にも変化はない。その仮面の下にあるのは私に対する憐憫か、それとも蔑みか。 「いずれにせよ、おまえのそのおしゃべりな顔をなんとかしない限り、俺はおまえに何も渡すつもりはない。それに、いま俺たちがやらなきゃいけないのは、くだらねえ称号の取り合いじゃないだろ。よく解らないリビングデッドの回収だ」  そうだ……。  私が精鋭部隊に選ばれて、今ここにいるのは、人類の新たな脅威、リビングデッドを生け捕りにして、その謎を解明する為……。  急に体の力が抜けて、私の手からケーバーナイフがするりと落ちた。  誰も見ていないからと、絶好のチャンスだと、なぜ私は凛音を、人を殺そうなどと思ってしまったのだろう。仮にも国民の命を守る立場にある、この私が。  よろよろと体を起こした時、喜孝が戻ってきて、緊張しながら凛音へ報告しながらも不思議な目で私をちらちら見ていた。 ***
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