閃光

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 入隊してから3年、私は常に同期隊員の上を行く存在だった。10年に一人の逸材、まさに英雄などと噂されたりもしたものだ。だが、そうした言葉の後に、必ず「根本隊員の次に」と続くのだ。根本凛音は、その当時から雲の上の存在であり、運良くその姿を見かけた者は、まるで奇跡でも目の当たりにしたかのように浮かれた。  そう──これは奇跡だ。この任務で根本凛音と一緒になるなど、私の能力を見せつけてやれと言われたようなものだ。 「鈴木葉菜(はな)隊員」  不意に名を呼ばれ、私は反射的に顔を上げた。部隊長と根本隊員が私を見ていた。 「葉菜隊員と喜孝(よしたか)隊員は、凛音班長に従うように」  好都合だ。凛音より先に多くの成果をあげてやる。 「おまえが葉菜か」  凛音の、暗い光を帯びた双眸が、ゆっくりと私に向けられた。私は無言で敬礼した。 「噂は聞いている。期待してるぞ」  期待以上の事をやってみせる。 「だが、なんだかよく解らないのが相手だ。喉仏を切り裂いたら動かなくなったが、もしかしたらまた夜に復活するかもしれん。決して無理はするな」  私の隣に並んだ佐々木喜孝が、背骨が折れるんじゃないかと思うほどに胸を張って敬礼で答えた。凛音はそれに小さく頷くと、再び部隊長に向き直った。  五分刈りの私よりも長い凛音の髪が、微風にさらさらと揺れている。こんなところにいなければ、俳優とかモデルにでもなっていそうだ。それが凛音の人気のひとつでもある。もっとも、愛想は期待できないが。
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