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俺は奏汰先輩と会うことがいつの間にか、凄く楽しみになっていた。
奏汰先輩と関わっていくうちに、奏汰先輩のこともだんだん分かるようになってきた。例えば、普段は敬語だが、話が盛り上がったりして興奮すると、タメ口になるということ。それから、俺が時々持っていく手作りのお菓子の中でも、クッキーをたいそう気に入ってくれているということ。出会った時のような作り笑いをしなくなり、楽しそうに笑うようになったということ。
奏汰先輩の新しい発見を見つけていくのが、何でか分からないけど、凄く嬉しかった。これは、この奏汰先輩は、俺しか知らないんだぞ、なんて思ったり。
俺、幸せだな~。
・・・・・・・
「そういえば、新入生歓迎会が終わった次の週にテストがありましたね」
「ああっ!せっかく忘れてたのに~!」
そう、皆さんお察しの通り、俺は勉学が苦手である。出来ないのである。この学園の編入試験は難関で有名だが、姉や母のスパルタで頭に詰め込めるだけ詰め込んで挑んだ。もう、あの時に詰め込んだ知識は俺の頭には残っていないのだ。
「真琴は、勉強が嫌いなんですか?」
奏汰先輩が、以外ですねというような顔をして言ってくる。
「嫌いなんてもんじゃありませんよ、出来ないんです」
俺が、どうせ奏汰先輩は出来る人なんでしょう?と文句を言っていると、奏汰先輩が笑いながら提案してくれた。
「それじゃあ、私が教えてあげますよ」
「やったー!ありがとうございます!」
とてもラッキーな申し出に、即答した。奏汰先輩に教われば、赤点回避、間違いなしに違いない。
後から奏汰先輩に聞いた話だが、奏汰先輩は学年次席らしい。改めて、奏汰先輩は一体何者なんだと疑問に思った。
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