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「……奏汰先輩…?」
俺が呟くと、「え!?真琴、二階堂奏汰副会長と知り合いだったの?」と宏太が驚きながら聞いてきた。
「二階堂、奏汰……」
…奏汰先輩が副会長だったのか?
奏汰先輩は自分が副会長だって言ってなかっただろ…?奏汰先輩は、俺を騙してたの…?
副会長フラグを建ててしまっていたことなんか、この時の俺は考えていなくて……。ただ単純に、奏汰先輩が俺のことを騙していたという事実が凄く悲しくて、胸の辺りが痛かったんだ。
放心してしまって、ぼぉーっと奏汰先輩を見ていたら、奏汰先輩と目が合った。その瞬間、全身の毛が栗立った。泣きそうになって、取り敢えずどこか人のいない場所に行きたいと思った。
「宏太、…悪い。ちょっと外出てくる」
そう宏太に言って、俺は会場からかけて出た。
だいぶ走って、人気がないところにきた。でも、それでもまだ奏汰先輩のいる会場から離れたくて、歩いた。
「俺って、そんなに信用されてなかったんだ……」
歩きながら自傷気味に呟く。
もし俺に副会長だって知られたら、俺が態度を変えると思ったの?奏汰先輩には、俺はそんなに薄情な奴に見えてたの?だなんて。そんな、ネガティブなことばかり浮かんでくる。
涙が止まらない。止めようと思っても、どんどん、次から次に溢れてくる。
「真琴っ!!!」
ふいに誰かに抱き締められた。微かに香る、花の匂い……奏汰先輩だ。
「そうた、せんぱっ、…?な…んで?」
言い出したらもう、止まらない。
「さっき、宏太から聞いたよ…?おれ、そんなに信用なかったの?自分のことを副会長だって知らない俺のことをからかってたの?俺が、簡単に騙されてるの見て、内心では、笑ってたの…?奏汰先輩は、俺のことが嫌いな「そんなわけないっ!!!」…え?」
奏汰先輩は、俺を抱き締めながら話す。
「最初は、俺のことを知らないなんて珍しい奴もいるんだなって興味本位だった。暫くしてネタばらししたらどんな反応をするだろうって。…でも、お前と……真琴と話していくうちに、この関係を壊したくないって思うようになったんだ。もし俺が、自分は副会長なんだって言ったら、真琴は俺から離れていくかもしれない。真琴がそんな奴なんかじゃないって分かっていても、不安だったんだ。真琴が俺から離れていくのが怖かった…」
奏汰先輩、そんなことを考えてたんだ…。そうか、俺、嫌われてたわけじゃなかったんだ…。
俺が一人で安心していると、奏汰先輩が言う。
「……きだ…」
「へ?」
「好きだ…真琴。お前のことが、どうしようもなく好きなんだ」
奏汰先輩が続けて言った。
俺の…、恋人になって欲しい……。
「ダメ……か?」
俺の顔を覗き込みながら言ってくる。先輩の目には、今までに見たことないぐらいの熱がこもっている。その目に見つめられただけで蕩けてしまいそうになるんだ。
恋人になって欲しいだなんて…。そんなの、答えなんか決まっている。俺は、奏汰先輩に嫌われたと思って…信用されてなかったのだと思って、傷ついていたんだ。
それは、嫌われるのが怖かったから……信用されていないのが嫌だったから…。
「ダメじゃ、ないです…。俺も、奏汰先輩のことが好きです…!」
俺が言い終わらないうちに奏汰先輩の胸に抱き締められる。そして、奏汰先輩が俺の耳元で囁く。
「俺今、人生で一番幸せだ…」
熱のこもっているセリフにドキッとする。
俺だけドキドキさせられるんじゃ、気がすまない。
「そんなの、俺のセリフです…」
そう言って、奏汰先輩の頬にキスをする。奏汰先輩が驚いているのが可笑しくて、へへっと笑ってみせると、奏汰先輩がニヤッと笑った。嫌な予感がして、先輩の腕の中から逃れようとするが、びくともしない。この人、以外に筋肉あるからな…。腹筋も綺麗なシックスパックだったし。
俺の予感は当たり、奏汰先輩に口にキスをされた。
人生で一番最初のキスは、美形の恋人との、深い、深いキスでした。
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