無人島

1/5
前へ
/5ページ
次へ
 それはどんな地図にも書物の中にも残らない、いつのことかもわからぬ時代―  ある航海士の男女がその無人島に辿り着きました。  半日もあれば一周できてしまうほどの小さなその島は、豊かな動植物、飲み水の湧き出る池、そして穏やかな気候に恵まれていました。 「この島に僕たちだけの平和な国を作ろう」  二人はこの島に住むことを決意しました。  豊富な資源に恵まれているとはいえ、手つかずの自然のまま生きていくことは難しく、二人は木を伐り家を建て、森を開き畑を耕しました。幸運なことに、島には野生の鶏や羊がたくさんいて、それらを捕まえてきては卵や乳を採るために飼育しました。安定した飲み水の確保のため、湧き水を溜める井戸も作りました。  二人の努力の甲斐もあって、島での生活は快適なものとなり、やがて二人は子宝にも恵まれました。  その子供たちも立派に育ち、そのまた子供たちが大人になる頃には、島は随分と大所帯になっていました。  二人はその光景を見て「あの頃夢見た平和な国を作り上げることができた」と満たされた気持ちで、島の皆に見守られる中、安らかな眠りにつきました。残された人々は、見晴らしの良い丘の上に二人の墓を作り、島の更なる発展を口々に誓いました。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加