無人島

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 とはいえ、この島の大きさは限られており、住人全員の住居と食料を賄うにも限界が近いことは明らかでした。見渡す限り一面の海の中にポツンと佇むこの島で、島民たちは焦り始めていました。  考えた末、島の人々は、二人が残した航海術の本を頼りに船の操作を覚え、島の外に探索に出ることにしました。  二人が乗ってきた鉄船は、時が経ち錆びついていました。島では鉄を加工することはおろか、採取することもできませんでした。  そこで島の人々は森の木を使い、二人が乗ってきたものよりも大きく立派な船を作り上げました。完成した船が水に浮くのを見て島の人々は大喜びしました。  そうして島民の期待を一身に背負った航海でしたが、行けども行けども海が続いていくばかりで、調査は難航を示しました。  その結果、島に残っていた者からは「次は自分たちに行かせろ」と不満の声もあがり始め、あげくの果てには島のあちこちで船が作られ、勝手に島を出ていく者たちが現れました。そうしてできた船はどれも質が悪く、船員の知識も浅かったため、出ていった船が帰ってくることはなく、この頃島の周辺では、バラバラになった木片が絶えず海上を漂っていました。  そんな状況下で、二人が残した航海術の本はますます価値を高め、奪いあいの騒動まで起きるほどでした。そしてついには、島から持ち出した人間と共に海の底に沈んでしまいました。
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