檸檬

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さわさわと頬を緩やかに風が撫で、ゆっくりと意識が浮き上がる。 …今は何時頃だろうか。 遮光カーテンの隙間から延びた光は私の腹の側まできていた。なるほど、随分と寝ていたらしい。 ぐっと伸びをひとつすれば体はばきばきと悲鳴を上げる。 日曜日。 時計を見れば時刻は昼に差し掛かる頃合いで。 貴重な休みのうちの半分を睡眠に費やした私は、ようやく寝床を後にした。 先程の風は中庭からのものだったらしい。 春と言うには暑く、しかし夏と言うには涼しい風が花の香りを纏って部屋から部屋へと抜けていく。 そして薄いレースのカーテンがヒラヒラと揺れるその奥に、人影がひとつ。 「あっ、やっと起きたのね!」 向こうもこちらに気がついたらしい。 作業していた手を止めて、駆け寄ってきたのは私の愛らしい妻である。 つばの大きめな帽子にゴム手袋。 途中、頬でも触ったのか鼻のすぐ横には土汚れがついている。
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