チャプター1/黒き起点

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チャプター1/黒き起点

本チャプターのあらすじ:後にNGなきワルとしてアウトサイダーの特殊ポジションを築き、猛る女たちの巣に辿り着くことになる大打ノボル…。複雑な家庭環境からカミングアウトし、中学で金貸し業に開眼。リトルブラック時代を経て、黒き疾走の起点はここから始まる。 その1 ”11月とは思えない寒さだ。底冷えがするぜ…” 大打武次郎と”別れ”の前夜を共にしていた大打ノボルは、心の中でそう呟いていた。 大柄で力士並みの体躯を誇る武次郎は、ノボルより2歳年下で腹違いの弟である。 *** 「…じゃあ、予定通り、まず熊本なんだな?」 「ああ。明日、鶴見で椎名と会う。八代在住のヤツの”仲間”には、すでにオレの受け入れ態勢を段取りしてくれたようなんでな。詳しい話を聞くことになってる」 年季の入った赤い石油ストーブに当たりながら正面に向かい合っている兄弟二人の会話は、なんとも事務的で、それは”ビジネスの打合わせ”と言えた…。 そう…、二人はこれから繰り広げることになるであろう遠大な計画への第一歩となる、ノボルの出立に際し、綿密な今後の申し合わせを踏んでいたのだ。 実に、綿密な…。 *** 「…なにしろ、オレが不在中はお前がどんどん進めてくれ。オレも随時連絡は入れるし、そっちの状況は確認する。とにかく離れていても連携はしっかりとだ。足並みの乱れは避けないとな」 「ああ、わかってる。兄貴の留守中はオレが万事仕切るから心配はいらねえよ」 「フフ…、まあ、お前に任せておけば安心なのは俺が一番承知してるがな。ただ、諸情勢の変化には細心で気を配ってほしい。それ次第でオレたちの身のこなし方が違ってくるからな」 ノボルはストーブに前のめりの態勢で広い肩幅をいからせたまま、目を細め、弟への念押しには余念がなかった。 最も、ノボルはまさに武次郎に全幅の信頼をおいていた。 要するに、大打ノボルは極めて慎重深い気質だったのだ…。
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