チャプター1/黒き起点

8/11
8人が本棚に入れています
本棚に追加
/197ページ
その8 ”椎名彰利か…。確かに武次郎の言うとおりだ。こんなベストパートナー、他にいやしなかった。コイツの代わり、どんな野郎もカンペキ無理だ。…今目の前にいるコイツが九州からここ横浜へ引っ越してこなきゃ、大打ブラザースのリトルブラックはあり得なかった。間違いなく…” ”小学校の半ばで、九州の片田舎からこのハマに越してきてオレは、周り全部を敵とみなした。それはこっちから能動的に。ここの奴ら…、自分たちの住んでる街を東京以上の都会だと思い込んで、はるか南の大田舎から転校してきたオレを、まるで山奥で生まれ育った原住民扱いだったぜ。よって、奴らには嫌悪感と敵愾心で向き合ったって訳さ。こっちに来てしばらくは、まさに一人ぼっちだったわ。そんなオレの前に現れたのが、大打武次郎だった…” *** 「…兄貴、コイツが九州熊本からの転校生だよ。椎名彰利ってんだ。今日も6年の威張りくさった野郎に一人で立ち向かってたんで、加勢してやったぜ(薄笑)」 ”武次郎は太っていて体型も大柄なので、人にはおおざっぱな性格って印象を与えるだろうが、実に繊細でオレほどではなくとも、ドライな冷淡さと計算高さを持ち合わせていた。その武次郎が、手放しで絶賛した男…。それが椎名彰利だった…” *** 「そうか…。兄貴も彰ちゃんを気に入ってくれたんだな?」 「…武次郎、アイツとは組める。そういうことだ。確か父親は畳職人で、母親はピアノが弾けて近所のお嬢ちゃん連中に”教えてる”そうだな。それで一人っ子か…。家庭環境もいいな。使えるぞ、ヤツは。オレも今からしっかり”お近づき”になっておこう…」 ”そして俺達3人は、実にバランスの取れたチームワークと意思疎通のもと、リトルブラック・ロードの原型を模索し始めた…” *** ”何しろ3人からだったな。オレと武次郎だけでは所詮、周囲を蹴散らすだけで終わっていた。だが、武次郎の兄、ノボルさんが加わることで、ローティーンのオレ達は、当時いっぱしのモブスターズだった。痛快だったぜ…” 椎名は正面の大打のお株を奪うかのような細い目で、モブスターズ・ボス、ノボルヘ、幾多の思いを馳せた眼光を送っていた…。
/197ページ

最初のコメントを投稿しよう!