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人々に問う
小さい頃、ヒーローに憧れた。
ヒーローはどんな時でも悪をやっつける。
ヒーローはピンチに駆けつけてくれる。
ヒーローはどんな逆境も覆す。
ヒーローは最後には勝つ。
そんなカッコいい姿に僕は憧れた。
大きくなったらそんな風になりたい。
僕もヒーローになりたいと夢を見ていた。
悪者が街に現れ、悪さをする。
するとヒーローはやってきて悪を退治する。
そんなの姿をニュースで何度も見た。
画面の中では人々はヒーローに感謝していた。
涙を流した後、笑って感謝をしていた。
ーーそんな姿に僕は強く憧れた。
そして僕は成長した。
憧れていたあの日々から数年。
まだ大人とは言えないけど、あの時よりは成長した筈なんだ。
でも、変わらず僕はヒーローに憧れていた。
画面の中のヒーローになりたいと強く思っていた。
そんなある日、平和だった僕の街に悪が現れた。
その日は雨が降っていて、傘を忘れたお母さんを僕は駅に迎えに行っていた。
その駅に向かう最中、あと僅かで駅に着くその時、偶然にも僕はその悪の姿を初めて画面越しでは無く自分の目で見た。
見た目は怖く、目つきは悪く、そして何より人を殺して暴れまわっている。
血は流れ、聞こえるのは悲鳴や破壊音。
その悪の姿に似た悪を僕は小さい頃にテレビで見た気がした。
ーー怖い。怖い。怖い。怖い。
必死で逃げ惑う人々の中で、僕も必死で逃げ惑う。
ヒーロー早く来て!ヒーロー助けて!
僕は逃げながら必死で祈った。
そんな祈りが通じたのか、ヒーローは現れた。
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