人々に問う

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「もう大丈夫。僕がみんなを助ける」 その姿はカッコよく、その背中はとても大きく見えた。 画面の中からでは伝わらない勇敢さ、そして何者にも変えがたい大きな背中だった。 「現れたなヒーローっ!!忘れもしないぞ、お前が僕のお母さんを‥‥殺したんだっ!!」 「黙れ悪!お前を成敗する!!」 ヒーローは悪と戦い始めた。周りの人々はヒーローを応援する。 ヒーロー!!! ヒーロー!!! ーー声援がこだまする。 その声援も背中を押してか、ヒーローは圧倒的強さで悪を追い詰めていく。 そして更に声援は加速していった。 悪は滅びろ! 悪は滅びろ! くたばれー! 地獄に落ちろー! 悪に対する色んな罵倒の言葉が聞こえてきた。 当然ながら、悪を応援する者は誰一人いない。 「くっそぉ!お母さんを返せっ!!」 悪は必死で抵抗していた。ヒーローの放ったビームを何とか躱していた。 しかしその抵抗も虚しく、ヒーローは最後の大技を繰り出す態勢に入った。 「これでお前は終わりだ。くたばれ悪ーー!!」 金色に光ったヒーローの、ビームのような一撃が悪目掛けて放たれた。 「くそぉぉぉお!!」 悪の悲鳴が響き、爆発が起こり砂塵が舞う。 煙が晴れた後、その悪の姿は塵一つ残っては居なかった。 辺りはヒーローコールが巻き起こる。 人々は歓喜で揺れ、涙を流すものまでいた。 僕もこの高ぶった気持ちを早くお母さんに伝えたくて、急いで駅に向かった。 お母さん、僕ヒーローを見たんだ! お母さん、僕ヒーローになりたい! 早く伝えたかったから、僕は急いだ。 ーー駅に着いた時、誰かが倒れているのが目に入った。 人だかりが出来ていた。 その姿を確認すると、その姿は血だらけになったお母さんだった。 「お母さんっ!?」 急いで駆け寄るが、ぐったりとしていた。 僕はすぐに近くの人に何があったのか尋ねた。 「突然向こうの方からビームが飛んできて、この人に命中したんだよ!」 その時、僕はあのヒーローが放ち、悪が躱したビームを思い出した。
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