救いの手

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 合格発表を見に受験した高校へと行った帰り。  何を思ったのか、私は橋の柵に足を引っ掻ける。  ここから落ちてしまえば、あの子に会えるだろうか。  真下に流れる川を見て思う。  昨日の雨で流れは激しかった。  体の重心を少し前にやってみたそのとき、 「待て待て!早まるな!!」 「えっ……きゃあ!?」  突然制服のブレザーを引っ張られそのまま体が後ろへ倒される。  ドシンッと鈍い音を立てて私の体は橋の上に戻される。 「痛っ!」 「痛いのはこっちだ……!」  私の下から苦しそうな声が聞こえてくる。  ちらりとそちらを見てみると、私は何かを下敷きしていた。  地面のように硬くなければ、クッションのように柔らかくもない。  落ちた拍子で眼鏡を落としてしまったようで、ぼんやりとしか見えなかった。 「早く、退けてく、れない、かな……?」  その言葉ではじめて人の上に乗っているのだと気づいた。 「あっ、ごめんなさい!」  私は慌ててその人から降りるとカチャッと音がした。  音のする方を見るとぼんやりとだが見覚えのある形の物が落ちていた。  自分の眼鏡だと思い、咄嗟に掴んで装着する。  その人物は同い年くらいの男子中学生だった。  見たことのない制服を身につけていて何処の学校の人だろうと思った。  彼は体を起こすと私を見て「あんたさ!?」と言った。 「受験に失敗したからってそりゃないだろ!?まだ時期的に受けられる所あるだろうし!そんなんで人生捨てんな!!」  彼はあたふたしながら私にそう訴えていた。  何を言っているんだ、と思った。 「あ、違った……?」  キョトンとする私に彼は恥ずかしくなったのか、「今のは忘れてくれ」と顔を手で隠した。 「というか、今死なれたら困る!まじで!目の前で死なれるとかやめてほしい。自殺なんて迷惑なだけだろ!?」  その言葉で、自分がしようとしていたことに恐ろしくなった。  何を考えていたのだろう。  そんな簡単にできるものではないはずなのに、『死』を選ぼうとしていたのかと。  自分が怖くて泣き出しそうになる。  親友はもっと辛かっただろうに、私は簡単に済ませようとしていた。  ごめん、ごめんなさい。  私は腕を抱えて小さく震えた。 「別に理由は細かく聞かないけどさ、人に迷惑かけることだけはやめとけよ」  名前も知らない男子生徒は名前も知らない私にポンポンと背中を軽く叩く。  背から感じたその手はとても優しかった。  すると遠くからチャイムの音が聞こえてきた。 「あっ、合格発表!」  彼は慌てて立ち上がり、 「絶対、変な真似はやめろよな!」  と言い残して一目散に去っていった。  彼も合格してたらいいな。  そして、いつか、彼にお礼が言いたい。   
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