第14話 記憶の枷

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★  消灯時間はとうに過ぎているのに、イリーナは眠れずにいた。部屋の灯りも全て消してもどうしても眠れない。  カーテン越しの窓から見える学院内の街灯が、オレンジ色に鈍く光っているのをなんとなく眺めて、眠気が来るのを静かに待つ。  そんなイリーナの耳に、僅かに物音が聞こえた。  獣化の影響か、聴覚が鋭敏になったことも眠れない原因かもしれないと思うイリーナだが、その聴覚のおかげでクラスメイトの不良行為を発見する事が出来た。  イリーナの部屋は二階に位置している。カーテンをサッと開け窓を全開にすると、ちょうど真下を通っていた人影が驚いたのか飛び上がった。 「おわっ……なんだ、イリーナか」 「あんた今何時だと思ってんのよ?」  真下でコソコソしていた、というより男子寮へ向かうのに女子寮の前を通らなければならないからか、足音を出来るだけ消して歩いていたレオは、突然開いた窓を見上げてふて腐れたような顔をした。 「何時でもいいだろ別に」 「良くないよ。学院の規則知らないの?」 「知ってる!だが俺には関係ない!!」  なんて奴だ、とイリーナは顔を顰めた。自由人といえばマシだが、実際はただのクズだ。どうせまた、如何わしいお店にでも行っていたのだろう。 「バリス教官に言いつけようか?」 「好きにしろよ。あんなゴリラ怖くもなんともない」 「あっそ。それで、どこ行ってたの?」  そう聞けば、レオは眉間にシワを寄せてイリーナを睨む。 「お前には関係ないだろ」 「ですよねー。あんたってそういう奴よ、どうせ」  はいはいわかってますよ、とため息をつけば、レオは少し罰の悪そうな顔をした。 「……本当はシエルと会っていた。悪いんだが、明日から少し出かけてくる」
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