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魔術師養成機関。通称〈学院〉。
品行方正なエリート魔術師を養成する、堅っ苦しい軍部の施設。
現在協会の魔術師の殆どが、この学院出身者であり、野良魔術師は僅かしかいない。
野良魔術師とは、昔ながらの師弟関係において魔術を学んだものであり、師となる魔術師の腕によっては、クソみたいな魔術師にしかなれない。
この会議室にいる魔術師は、ザルサスと俺以外全員学院の出身だ。
「魔術師らしい魔術師として成長するには、やはり学院に通うのが良いと、上の判断だ。無事、問題を起こす事なく卒業できた暁には、もとのポストを約束する」
ザルサスは断言すると、徐に右手を掲げる。
「悪いな、レオ。大人しく従ってくれ」
俺はザルサスがなにをしようとしているか理解した。
避けるにはこの場から離脱するか、会議室を破壊するしかない。
のだが、この会議室はリーダーであるザルサス以外魔術が使えない仕様になっている。
「おいおいおい冗談じゃねえよマジで笑えないんだが」
「ほう、これを知っているのか。お前はやはり、優秀だの」
ザルサスの掲げる右手を中心に、黒い光の円環が構築される。それは徐々に面積を増していき、同時に禍々しく輝く。
「それはほら、本来魔族とかドラゴンとか拘束するための魔術だろ!?なんでっ、俺にっ、向けてるのっ!?」
「仕方なかろう。お前のバカみたいな力そのまま、学院へ通わせるわけにはいかん」
円環に流れたザルサスの強大な魔力が、俺に向けて解放される。
「〈禍きもの、勁きもの、我が名をもって封じ込めよ、破りしものに破滅の呪いを齎せ:封魔〉」
詠唱が終わると同時、俺の全身に鈍い痛みが走る。それは心臓から瞬く間に末端まで駆け抜けて、視界に入った皮膚に黒い痣が浮かんで消えた。
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