第30話 板挟み

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☆ 「ったく、お前らマジで出来ねぇ奴らだな」 「先輩と顔合わせるんだからさぁ、飲みモンくらい気を利かせて買ってこいよなぁ」  今日の授業は1日かけてのもので、午前中に先輩グループと連携を強化し、午後から軍部の魔術師相手に戦闘訓練を行う。軍部側は4人。4対8の平地での戦闘を想定して、事前に個々の得て不得手を確認しながら攻めや護りの役割を決める。  協会に入れば、任務前に必ず行うものだ。  ちなみにオーレリアンは見学だ。間違っても他国の王太子殿下に怪我をさせるわけにはいかない、という理由で。ただグループワークには参加することになっている。  よって今さっき、先輩グループと外のベンチで合流したのだ。で、真っ先に言われた言葉が、冒頭のアレだ。 「おれら別に先輩たちのパシリじゃないんで」  と、早速イライラして答えたユイト。笑みを浮かべてはいるが引き攣っている。 「はあ?後輩なんだから口答えすんじゃねぇよ」 「口答えじゃなくて、正当な意見を言ったとおもうんですけど」  これはイリーナだ。コイツはすでに先輩方を睨み付けている。終わった。 「あ、あの、一応授業なので、早速話し合いをしませんか?」  可愛らしく困った笑みを湛えてリアが言う。が、 「うるせぇよ。顔だけの女のクセに。どうせそこの特級に媚び売ってグループに入れてもらったんでしょ?」 「金獅子って女好きって言うし。っても、か弱そうなこんな女が趣味なの?なんか幻滅したわ」  先輩グループの女2人がそう言う。チャラチャラしたギャルで、ひとりは長い茶髪のカミラ、もうひとりは肩までの茶髪のエッダ。どちらも化粧品と香水臭い。  俺のリアになんて言い草だコンチクショー!!  しかも俺まで被弾した。まあ、別にこんな性格の悪い女に幻滅されようがどうでもいいが。  一番困るのは、俺の隣でクスクスと、堪えきれないというように笑うオーレリアンだ。
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