第30話 板挟み

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「んだよ、テメェ?つかなんでお前ら5人なんだ?」 「ああ、すまない。自己紹介がまだだった。俺はオーレリアン・ド・サンクレア。留学生としてレオのグループに参加させてもらっている」  オーレリアンはフルネームで名乗ると、爽やかに笑った。俺は心臓が破裂しそうになっていた。まさか本名をフルネームで名乗るとは思わなかった。隣国の王太子であることは隠しておいた方がいい気がするのだが。  俺だったら、知らなかったとは言えこんな無礼な態度を取ってたと気付いた時点で死にそうになる。俺の敬語の出来がどうであれ、な。  しかし、先輩方は興味なさそうにこう言った。 「あっそ」 「ブフフッ!!」  堪えきれん、とばかりにオーレリアンが吹き出す。 「レオ、学院の授業内容に、他国との関係や歴史、地理を追加した方がいいんじゃないか?」 「……申し訳ない。バリスに伝えておくよ」  何にせよ先輩方がバカでよかった。恥をかいたのは俺だが、オーレリアンの言う通りだ。ナターリア国民として、協会に入る魔術師として、無知を晒して気付かないなんてもう、言葉もない。恥ずかしい。 「そんなことより、授業内容に沿うように話し合いをしなければならないのでは?俺は午後からの戦闘訓練には参加しないが、これが任務を想定した連携強化のためのブリーフィングの勉強ということなら、どこの軍事機関も実施しているものだ。真面目に取り組んでおかないと、卒業後に失態を犯すことになるだろう」  気を取り直してオーレリアンが言う。真面目な顔はまさに、人の上に立つ人物であることを醸し出している。  俺もこんな威厳みたいなの出せたらいいんだけどな。チャランポランなイメージがついてしまっている今、ハッキリ言って無理だった。悲しいぜ。 「テメェに言われなくてもわかってんだよ」 「つかもう作戦はできてんだ。お前ら後輩が前線で足止め。オレらは後ろで援護。で、弱らして倒す。完璧だろうが」
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