第30話 板挟み

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 ちょっと!!と声を上げたイリーナを、片手を上げて止めた俺は、いつになく厳しい顔で口を開く。 「……先輩方は本気でそれでいいと思ってるのか?」 「何か問題があるか?つーか、お前がいる時点で勝ち確じゃねぇか。それとも実際はそんなに強くないのか?」  何だかもう怒るのも面倒になってしまった。  そういえば、クラスメイトたちは俺が特級魔術師で、金獅子だと知っても、こんな甘えた発言をしたことはない。  貪欲に知識を求めてくることはあれど、面倒や出来ないことを丸投げしてくることなんてなかった。  その違いが、これからの成長に繋がるんだろうと思うが、この先輩方がどうなろうが俺の知ったことか。 「わかった。ならあんたたちの作戦通り、俺たちが前線を張る。ユイトとイリーナはいつも通り前衛、リアは後衛で守りを固めてくれ。援護が必要ならリアに合図を。俺は基本的に手は出さないようにする。戦力バランス的にも、軍部の奴ら4人ならお前ら3人で事足りるはずだ」 「わかった!」 「いつも通りね!」 「うん!」  俺たちは互いに頷き合った。各々の戦力は理解しているし、何より場数と訓練経験が違う。俺がいつも通りと言えば通じるし、あとは臨機応変に対応可能。俺が指示を出せばいい。 「先輩方は自分の身を守るくらいはしてくれよ。俺はアンタたちの実力を知らない。軍部の魔術師は確実に獲れるところを攻めるだろうから、標的にならないように精々努力してくれ」  じゃあな、と俺たちはその場を後にした。もう話し合うこともなければ、出来るだけ顔も見ていたくなかった。  後ろから盛大な舌打ちが聞こえるが、無視しておく。 「足引っ張られないといいな」  オーレリアンがニヤニヤと笑って言う。俺は溜息を吐き、答える。 「全くその通りだよ。協調性もクソもないな」 「レオがそれ言う?あんた、いつも単独行動だったんでしょ?」 「ウグッ!!だ、だって、俺の場合は人間を巻き込む可能性があったからであって、別に協調性がなかったわけでは……」  ……いや、無かったわ。皆無だった。
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