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☆
そして午後。
昼休みもそこそこに、闘技場に集まった3年と2年は、各グループごとに分かれて整列していた。
何だか緊張感の漂う闘技場だが、その時すぐ側の校舎の窓から歓声があがった。
「レオせんぱーい!!頑張ってくださーい!!」
3階の1年の教室だ。何人かの女子が窓から上半身を覗かせて、健気な笑顔で手を振っている。
「恥ずかしいからやめてくれ!!」
呼ばれた俺は手を振りかえしながら叫ぶ。
そう、最近の俺は下級生には大人気なのだった。
食堂での一件以来、後輩たちは事あるごとに質問に来たり、相談しに来たりするようになった。
悪い気はしない。いや、ほんと言うとめちゃくちゃ嬉しい。本来ならこういう反応が正しいのだ。だって俺、金獅子なんだぜ?
筆箱や教科書、辞書なんかを投げつけられて良いわけがないのだ。
「チッ!ダラシねぇ顔してんじゃねぇよクソ!」
俺のすぐ前に立つトロイが振り返って言う。
「男の嫉妬ほど格好悪いものはないと思うが。あ、先輩もそのモサイ黒髪やめてイメチェンしたら良いんじゃないか?まあ、持って生まれた顔がクソじゃどうしようもないだろうけど」
午前のこともあって、すっかり先輩方に諦めがついてしまった俺は、されるがまま無視を決め込むのをやめることにした。
売られたケンカは買う。基本的に性格が悪いので。
初めて単純に言い返された先輩は、あからさまに表情を歪めた。
「先輩、眉間にシワ寄せ過ぎ。怖っ。魔族の方がまだ可愛らしい顔してるぜ」
「テメェ!!ブッ殺すぞ!!」
怖〜い、と言ってニヤニヤしながら、後ろのユイトの背に隠れる。静かにやりとりを聞いていたユイトが、オロオロしながら先輩へ、引き攣った笑みを浮かべた。
先輩がさらに何かを言う前に、俺たちの前にバリスが現れた。授業開始の時間が来たようだ。
「おい!無駄話してんじゃねぇ、殺すぞ!」
第一声に頭の悪さを滲ませたバリスがこちらを見回すと、あちこちでしていた話し声が消える。
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