第30話 板挟み

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「各クラスの担任から、今日の授業については説明を受けているだろうから全員が理解しているだろうが、午後からは実践だ。午前中に立てた作戦が如何に愚かかを、実際の戦闘の中で学べ。そして改善しろ」  なんて言い草だ。まあ、バリスらしいと言えばそうだが。  広い闘技場のいくつかの場所で戦闘訓練が始まると、一気に騒がしくなった。各所で魔術を詠唱する声や、魔道具がかち合う金属音が響く。  俺たちの出番は中盤。少し離れたところで、様々に繰り広げられる戦場の様子を観察していると、フッと隣にバリスが現れた。 「お前のグループはどうだ?」 「どうもこうもない。先輩方が舐め腐ってる。お前がいる時点で勝ち確だと。全く、訓練をなんだと思ってんだ」 「その言葉、そっくりお前に返してやる」 「んだと!…まあ確かにさ、俺は協会のそういう模擬戦とかに出たことはないが……でも舐めてたわけでもない。それぞれに努力の方向性は違うからさ。ま、見ててよ。どんだけ酷いか、わかると思う」  バリスはフン、とゴリラみたいに鼻を鳴らして、さっさと何処かへ行ってしまった。  それから2時間ほどで、俺たちの番が来た。  戦闘訓練がまだのグループやすでに終わっているグループは自由時間なので、俺たちの周りはそういった生徒で賑わっていた。  学年トップグループの実戦なのだ。嫌でも注目されてしまうのは仕方ない。ただ、こんなクソみたいなグループの戦闘など見る価値もないぞ、と言ってやりたくはなる。 「やあ、レオ!元気か?」  などと、これから対戦する軍部の魔術師が声をかけてくる。それなりに軍部にも出入りするので、名前は知らないまでも顔見知りはけっこういる。そして俺はいつも一方的に名前を呼ばれるのだ。 「ボチボチだ」 「なんで訓練前から疲れた顔してるんだ?」 「仕事が忙しい上にこんなくだらない授業に出なきゃなんないからだよ!!」  ハハハ、と軍部の魔術師たちがどうでもよさそに笑った。  お互いに配置に着き、監督役の教員が「始め」と無機質な声で言った。  その瞬間、さっきまでの和やかな会話がウソのように、相手は空気を変えた。
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