第30話 板挟み

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「ボスは見学で終わりか?」  フッと視界の隅に長剣が見え、俺は姿勢を下げて避ける。残りの敵2人は、間違いなくこの場の強敵である俺を、同時に狙うことにしたようだ。 「見学のつもりはないが、でも本気を出すわけにもいかないだろ」 「暇つぶしに付き合ってくれよ。金獅子とやり合える機会なんてそうないからさ」  なるほど、と俺はニヤリと笑い、〈黒雷〉を呼ぶ。 「〈静謐の棺、眠るは獅子の鼓動、目覚めるは双黒の刃、血の誓いの元、我が命に応じよ:黒雷〉」  パチチ、と黒い雷の粒子を帯びた刃が現れ、それを見ていた連中が軽く息を呑んだ。  この場で魔剣を見たことがある奴は少ないだろうが、これは普通の魔道具と違って、禍々しい気のようなものを発している。必然的に恐怖を感じてしまうのだ。 「遠慮なくかかって来いよ。バリスも見てる。名を売る良い機会になればいいな!」  そう言って、トンと地面を軽く蹴った。瞬時に間合いを詰め、手にした剣で攻撃を繰り出す。俺のスピードにかろうじて反応した相手は、グッと息を止めて〈黒雷〉を受け止め、勢い余って後方に転がった。  追い討ちをかけようと一歩踏み出す、が、今度は後方から、 「〈剣尖の刃、鎌鼬の如く、切り裂け:風双破〉!こっちも忘れないでくださいね、レオさん!」  と、風の刃がいく筋も飛んでくる。それらを、片手をかざして直接魔力を放ち全て打ち消す。  比較的若い男だ。でも、放たれた〈風双破〉はとんでもない威力だった。本気で殺しに来てる、と思うくらいに。  そうしている間にも、転がっていた相手が立ち直り、上手く連携をとりながら攻めてくる。ひとりは近接、もうひとりは魔術で援護。それらを、タイミングを見て入れ替えてくる。  やっと攻撃のクセを掴んだと思った途端、役割を入れ替えるだけじゃなく、戦闘スタイルまで変えてしまう。中々に面倒くさい相手だ。
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