第30話 板挟み

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 ふと視線を動かすと、ほとんど同時に、イリーナとユイトが敵を倒したところだった。刃先を敵に突きつけて、はあはあと息を切らせている。急所を取られた敵は、両手を上げて降参の意を示した。 「お、マジか。あいつら結構やるな」  俺の前で剣を振るう敵が呟く。 「そりゃ俺が鍛えてやってんだからな。お前ら2人は、俺を狙うんじゃなくてあの2人に加勢すべきだった。ま、それでもイリーナもユイトも勝ってただろうけど」  ニヤッと笑う敵。なんだか嬉しそうだ。 「できる奴が少しでもいて嬉しいよ。それにしても、あの後方待機組はなんだ?お前の先輩グループじゃないのか?」 「あれは役立たずだ。放っておいて構わない」  しかしまあ、そんな簡単な話で済まないのが戦闘というもので。  俺がぺちゃくちゃ話している間に、あの若い魔術師が全力で走って距離を詰め、ボケっとしているカースやトロイたちへと全力の〈火炎弾〉をぶち込んだ。 「あ、やべ」  と、ちょっといい気味だと思いながらも焦った。  自分の身は自分で守れと言ったが、あの若い魔術師の魔術はかなり練度が高い。且つ、魔力量も多かった。放った〈火炎弾〉は、広範囲に高火力の火柱をあげ、今も燃えている。  でも、幸い4人の魔力の気配は無事だった。  と言うのも、リアが直前に気付いて〈空絶〉を先輩方に発動したからだ。  かなりの距離があるが、瞬時に正確に、必要最低限の範囲のみに〈空絶〉を発動したリアは、しかし涼しい顔をしていた。  1年前とは大違いだ。3人とも、それぞれに大きく成長している。 「おい!ちょい待て。さっきから見ていたが、どう言うことだ?今日の授業の内容を、お前らは理解しているのか?」  ここで、バリスがドスドスと足音を立てながら乱入してきた。  俺は〈黒雷〉を一振りして〈火炎弾〉と〈空絶〉を消し、怯えた顔で尻餅をついている先輩方を剣先で示した。 「あいつらがこの作戦を立案した。俺たち2年が前線で敵を足止めし、先輩方が後方から支援。で、それぞれ自分の身は自分で守る。以上!イタッ!?」  ゴチン、と硬いゲンコツが降って来て、俺の頭が割れそうになった。
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