第30話 板挟み

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 実際、俺たちの今回の作戦を実戦でやった場合、最初に死ぬのは後方の先輩方だとは、俺も思っていた。  もし俺が敵なら、前衛の魔力量の多い精鋭を足止めして、魔力量の少ない後方を先に潰す。後方には援護や防御の魔術師が配置されていると考えると、先に潰しておいた方が楽だからだ。そして後方は、近接戦闘が苦手な場合が多い。近付けさえすれば簡単に殺せるのだった。 「いいか、これでわかっただろうから、同じミスはするな!上官の話はとりあえず聞け。そいつがどれだけ小憎たらしい奴でも、上官は上官だ。そして、この学院を卒業したあと、誰の命令を聞くことになるのかを考えろ。全く尊敬もクソもできない上級魔術師はいくらでもいる。ただ気に食わないからとか、くだらない嫉妬で意地を張っていると、間違いなくすぐに死ぬ。わかったな!?」  先輩方はバツの悪い顔をして、でも小さく、はい、と返事をした。  それを聞くとバリスは、フン、と鼻を鳴らし、ついでにもう一発俺の後頭部を叩いて退場した。  その後の闘技場は、言うまでもなく張り詰めた空気が漂い、みんなどこか、ビクビクしながら訓練を終えた。  先輩方は、いつの間にか何処かへと消えていた。
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