第30話 板挟み

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「彼女に悪いしさ、心入れ替えて、最近夜遊びやらやめたんだよ。今日はたまたま任務の帰りにリリルと出会ったから、夕食でもって思ってて」 「最初から飲んで帰るつもりはなかったんだよね」  ……目の前にいるのは、本当にあのジャスとリリルか?  俺と散々夜遊びして、賭けゲームを徹夜でやって、年がら年中女取っ替え引っ替えしていた、あの? 「ちょ、ちょっと、待て……その彼女って、」 「お前のクラスメイトだよ。つかレオが紹介してくれたみたいなもんだろ?」  そうでした。  ……いや、いやいやいや!! 「なんで変わっちまったんだよ……」 「別にいいじゃん。ってか、おれら最近ちょこっと頑張ってんだ。フェリルに魔族が侵攻して来たり、まあ、ゴタゴタあったろ?人手が全然足りてないからさ」  それを聞いて俺はちょっと沈んだ。エールを煽ってみても、ただ苦さが増しただけだった。 「あ、違う。レオを責めてるわけじゃねぇから」 「わかってんよ。でも俺の責任でもある。それは事実だから逃げてはいけない」  だからこそ、こうやって毎日必死で仕事をこなしている。 「魔術師の政治参入もあって、世間の魔術師に対する評価が良い方に変わって来てる。だから俺らも、遊んでる場合じゃないなと思ったわけ。ちなみに俺もジャスも、今二級魔術師なんだぜ」  なんだか嬉しいような、悲しいような、複雑な気分だった。もちろん頑張ってくれるのは有り難い。協会の為、自分の為、理由はなんであれ研鑽するのは良いことだし。  でもそれは、俺のやらかしてきた事が原因の一部ではある。  俺の過去を巡る一連の出来事で、フェリル防衛に出た少なくない魔術師が命を落とした。  忌まわしい過去の研究に関わった研究職の何人もの魔術師は、倫理違反や情報隠匿・漏洩なんかで職を失った。  これらに関わった特級魔術師が命を落とし、今、過去最少人数となってしまった。  そして政治面での役割を負うことにもなって、全体的にものすごく人手不足だ。
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