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「そっか。まあ、とりあえず二級魔術師昇格おめでと」
「ハハ!お前に改まって祝われるのもなんだか変な気分だ。二級になってさ、ちょっとだけ任務の質が変わったし、下の面倒も見なきゃいけなくなってきたから、レオが正体隠して色々頑張ってきたのが少しわかってな」
ジャスは照れくさそうに続ける。
「ま、比べられるもんじゃないし、おれ程度が頑張ったところで大したことにはならんかもしれんが、でも、なんでも頼ってくれよ。おれらにできることならさ、友人としてでも手伝うからな」
なんとも言えない照れ臭さを感じた。まさか、この悪友みたいなやつから、そんなこと言われるとは考えた事もなかった。
俺はいつも、どこでも、何をしてても独りだと思っていた。
この1年で、それが間違いだったと気付かされた。
俺も誰かに頼っても良いんだと思うようになった。
ただまあ、それが必ずしも良いことだけではないこともわかっている。
この後は4人で他愛無い現況報告や、くだらない世間話をしながら夕食を終え、店の前で解散となった。
俺はオーレリアンと再び歓楽街を歩き出したが、ジャスやリリルの心変わりが、嬉しくもあり、そしてなんだか寂しくもあり、とてもじゃないけどキレーなネェちゃんのいる店に行く心境ではなかった。
「なあ、レオ」
「ん?」
少し後ろを歩いていたオーレリアンが口を開く。
「実は、居酒屋だけじゃなくて、本当は他に行ってみたい場所があるんだ」
振り返るとオーレリアンは、なんとなくバツの悪い顔をしていた。
「何?魔族の城とかいうなよ。別に行ってもいいがかなりのリスクが伴う」
魔族の情勢が今どうなっているのかわからない。シエルが逃げてくる(本人は戦略的なんたら、と言っているが)くらいだから、魔族の多い地に足を踏み入れるのも難しい可能性が高い。
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