第30話 板挟み

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「そっか。まあ、とりあえず二級魔術師昇格おめでと」 「ハハ!お前に改まって祝われるのもなんだか変な気分だ。二級になってさ、ちょっとだけ任務の質が変わったし、下の面倒も見なきゃいけなくなってきたから、レオが正体隠して色々頑張ってきたのが少しわかってな」  ジャスは照れくさそうに続ける。 「ま、比べられるもんじゃないし、おれ程度が頑張ったところで大したことにはならんかもしれんが、でも、なんでも頼ってくれよ。おれらにできることならさ、友人としてでも手伝うからな」  なんとも言えない照れ臭さを感じた。まさか、この悪友みたいなやつから、そんなこと言われるとは考えた事もなかった。  俺はいつも、どこでも、何をしてても独りだと思っていた。  この1年で、それが間違いだったと気付かされた。  俺も誰かに頼っても良いんだと思うようになった。  ただまあ、それが必ずしも良いことだけではないこともわかっている。  この後は4人で他愛無い現況報告や、くだらない世間話をしながら夕食を終え、店の前で解散となった。  俺はオーレリアンと再び歓楽街を歩き出したが、ジャスやリリルの心変わりが、嬉しくもあり、そしてなんだか寂しくもあり、とてもじゃないけどキレーなネェちゃんのいる店に行く心境ではなかった。 「なあ、レオ」 「ん?」  少し後ろを歩いていたオーレリアンが口を開く。 「実は、居酒屋だけじゃなくて、本当は他に行ってみたい場所があるんだ」  振り返るとオーレリアンは、なんとなくバツの悪い顔をしていた。 「何?魔族の城とかいうなよ。別に行ってもいいがかなりのリスクが伴う」  魔族の情勢が今どうなっているのかわからない。シエルが逃げてくる(本人は戦略的なんたら、と言っているが)くらいだから、魔族の多い地に足を踏み入れるのも難しい可能性が高い。
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