第30話 板挟み

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 振り返るとオーレリアンは、ただ真っ直ぐに湖を見ていた。それからポツリと言う。 「確かに綺麗な場所だな」 「だろ?ちょうど湖の向こうがサンクレアだ。サンクレアの城に帰っても、ここはいつでも来れる距離なんじゃないかな」  ハハハ……と、笑った。  えーっと……もう話題がないぜ。寝たきりでうんともすんとも言わないオーレリアン相手だったら、適当にぺちゃくちゃ喋って終わりだったのだが、いざレスポンスがあると思うと、オーレリアンも何か言ってくれないと非常に気不味い。  さぁ帰ろうぜ、と口を開きかけた時、オーレリアンがやっと声を発した。 「サンクレア王から金獅子が魔族と手を組んでいるという噂が真実か確かめてこい、と言われたのは本当だ。あくまで留学のついでに、と。結果的に俺はお前と戦い、勝つ事ができて満足しているが、本気でお前を貶めようと思ったわけではない」 「殺す気ではいただろ、わりとガチで」 「ハハハ」  誤魔化しやがった!! 「ただ、その後の展開は予想していなかった。魔族と手を組んでいる事実を知っても、お前のクラスメイトはお前を信じた」 「そりゃ俺も驚いたよ。でも案外あっさりしてるからな、みんな。それに魔王城の件で人手が欲しかったから、いずれは話そうと考えてはいた」  この魔王城については、すでにオーレリアンにも話していた。手を組んでいる事が知られている以上、特に隠す必要もないと判断したから。 「辛くならないか?」  オーレリアンがやけに神妙な声音で言った。意図がわからず首を傾げると、さらにこう言った。 「人間も魔族も、分け隔てなく接することや、特級魔術師として、学院生として、するべき事も多いだろうが、全ての責任を負うのは辛くないか」
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