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俺は答えに困った。
辛いか、辛くないか、そんなことはどうでもいいと思っているから。
「特に考えたことはないな。別に自分の気持ちがどうかなんてどうでもいいし。俺はさ、ものすごくみんなに迷惑をかけてきた。今はその恩を返す時だと思ってる」
そう答えてから、ああこれは、王太子としてのオーレリアンの不安の話か、と考えた。
立場は違うが、お互いに誰かの上に立つ立場にある。もちろん仕事も多いし責任も重い。
誰かの正義や誰かの悪にも、公平を持って接しなければならないし、100人いれば意見なんてみんな違う。まとまるわけがない集団を率いていかなければならない。
上に立つ存在というのは、常に誰かや何かの板挟みだ。
それでも大多数の人は、こちらが公平である限りついて来る。責務を果たせば誰も文句は言わない。例え俺という存在が、人間と魔族のハーフだったとしても。
「これは俺の持論だが、自分ができる最善策をやっておけば良い。自分の気持ちなんて考えるな。それこそ辛いだけだ。今求められてることだけやってればさ、周りは納得するし付いてくる……まあ、完全に感情を捨てろというわけじゃないが、役割に徹することで上手くいなら、俺はそれでいいと思ってる」
「それでもたまには、誰かに寄りかかりたくなることもあるだろう?」
その問いに、俺は苦笑いするしかなかった。
「俺にとってのそういう存在はさ、みんな死んでしまったんだ。俺のせいでな。親でもいれば気兼ねなく話せばいいんだろうけど、生憎俺にそんな存在はいない。それに誰かに話したところで何になる?俺という全てが理解できるわけじゃないし、立場上話せないことも多い。話して危険に晒されることもあるだろうし、結局、最後に決めるのは自分だ。自分のことは自分でなんとかするしかないんだ」
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