第30話 板挟み

29/29
前へ
/1857ページ
次へ
 どれだけ周りに助けられていても、繋がりを持っても、金獅子として判断して行動できるのは俺だけだ。  それに今まで助けてもらってきた恩を返すためにも、俺はこれ以上誰かに迷惑をかけるべきではない。  結局俺は、魔術師としての個人主義的な考え方から抜け出せない。身に染み付いてしまっているのだ。  だから、俺はこの時こんな話をクソ真面目に語ったんだ。  オーレリアンの胸中を、知らなかったとは言えかなり酷いことを言ったと、後になって気付くのだが、その時にはもう取り返しがつかない状況に陥ってしまっていたんだ。 「お前は実に人間らしくないな」  フッと笑ったオーレリアンに、俺もニヤッと笑い返す。 「半分魔族だからかな。ま、でも俺も、寂しくなったりはするんだぜ。だからこういう、思い出の場所によく立ち寄るんだ。俺は誰かにウジウジと相談するより、こうやって景色見ながらボーッとするほうが性に合ってんだよ」  しばらくしてからフェリルに戻り、この日はこれで解散となった。  俺はオーレリアンが滞在しているホテルへ送り届け、それから協会の自分の仕事部屋へ〈転移〉して、終わらない仕事をこなした。  イマイチ何を考えているのかわからないオーレリアンを、次にどこに連れて行くかを考えながら。
/1857ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3597人が本棚に入れています
本棚に追加