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第31話 偽り
☆
それからも俺は、オーレリアンをナターリアの各所へ連れて行った。
寝たきりだった彼に聞かせた話に出て来た場所や、俺の個人的に思い入れのある場所、そしてフェリルの有名な観光地や特産品の店に行っては、くだらない会話をして、本当にまるで友達のように接した。
それが王太子殿下のお望みだったから……だが、話しているうちに悪くないな、と思い始めていた。
同い年で背負うものがあって、同じレベルの会話が出来る相手なんてそういない。学院生とも、協会の魔術師とも、シエルとも違う感覚で話せて、それはそれで充実した時を過ごせていた。
これが所謂友達という奴なのだろうか。
イリーナやユイト、リアは確かに友人だ。でも、何かを教え導かなければならないことが前提で、だから同じ目線で友達だ、とも言えない。そんなことを言えばあの3人はショックを受けるだろうけが、対等という意味では死んでしまった施設の仲間の方がそれぽかった。
オーレリアンを友達だと言い切るのは、隣国の王太子に失礼ではあるが、感覚としてはしっくりくるのだった。
この日、学院が休日のため、俺は朝から魔王城へ顔を出していた。
「イルダは買い出しの前に必要なものを確認してリストにしておいてくれ。俺の予算的に賄えるか心配だ」
魔王城の必要物品は全て俺の私財で賄っているので、余計なものを買う余裕はない。
バカな魔族どもはそんなこと気にもせず、目に付いた珍しいものを片っ端から買ってくるので、買い出しは出来るだけイルダに付き添ってもらうようにしている。
「魔族のクセにやけに食費が嵩むな。何故だ?」
「そりゃシエルたちだからだよ。ブランケンハイムの魔族たちは、必要かそうじゃないかに関わらず、出来るだけ人間らしい生活をしているんだ。現当主であるシエルの父親の言いつけ通りにな」
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