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基本的に魔族に人間のような食事は必要ない。が、趣味趣向の問題らしく、人間の酒が好きな奴やタバコを吸う奴もいる。
なのでシエルのように紅茶やワインにご執心なのも別に珍しいことではない。
とはいえ三食きっちり食う魔族も珍しいが。
怪訝な顔のイルダに、俺はもはや苦笑いしか出なかった。
「あ、それとイルダ」
「なんだ?」
「これは別件なんだが、サンクレアに行って来てくれないか?」
イルダの眉間の皺が濃くなった。
「何故?」
「オーレリアンの件なんだけどさ、やっぱりちょっと変だなと思って。たった一年であそこまで回復するのって、やっぱりどう考えてもおかしい。ロブレヒトが関わっているのなら、ついでに奴の居場所も明らかにしておきたい」
どれだけ交流を深めても、オーレリアンには悪いが、俺の魔術師としてのカンがどうしても拭いきれない不安を訴えている。
このチグハグさを解明するには、やはりサンクレアで何が起こっているのか知る必要がある。
俺が飛んでいって確認したいところだが、そうするとオーレリアンを疑っていると知らしめているようで、それもなんだか気が引ける。
まあ、隠れて探りを入れようとしている時点で、信用も何もあったものではないが。
これも魔術師としてのサガなのだ。どうしても真実が知りたい。何事もなく、本当にオーレリアンが健康になったのならそれはそれで良い。
それにロブレヒトには、そろそろ帰って来て貰わないと困るのだ。特級として仕事してもらわないと、そろそろザルサスの寿命が尽きそうだった。
イルダは長く地下に潜伏していたので、隠密行動や索敵能力にも優れているから、サンクレアに上手く潜り込めるだろう。
「わかった。が、もちろん特別手当が出るんだろう?じゃないと行かない」
「ゲッ、お前までそういうこと言う…クソ、まあいい。ったく、魔術師ってのは何でも金取ろうとするクソばっかだな」
お前もな、と言って、何人かの魔族を連れて、イルダは買い出しへ出掛けて行った。
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