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そのすぐ後に、イリーナたちがオーレリアンと共に魔王城へやって来た。
「やあ、サンクレアの王太子。僕の魔王城へようこそ」
運の悪いことに、出迎えたのはシエルだった。キザな態度で後ろ手に腕を組み、神経質な笑みを貼り付けている。
執念深いシエルは、この前の決闘のことをまだ根に持っているのだ。大方、僕の大事な戦力を傷付けた、みたいな非人道的な理由で。
「お招きに預かり光栄だ、シエル」
「僕は招いたつもりはないよ。レオがどうしてもって言うから仕方なく、ね」
シエルからピリピリとした静かな圧力が発せられているが、そこはさすが一国の王太子。全く気にも止めずに笑顔を浮かべている。
「ところでシエル。君は人間の嗜好品の類を好んでいると聞いたから、僅かばかりだが手土産を持参した。受け取ってくれると俺も嬉しい」
そう言って振り返った先には、両手にいっぱい紙袋をさげ、さらにいくつも重なった大小様々な箱を抱えた俺の弟子、ユイトの姿があった。
大荷物過ぎてもはや前が見えているのか怪しく、本人もフラフラと器用にバランスを保って立っている。
「フン、土産で機嫌を取ろうと?下賤な人間の考えることは単純だな」
などと言いながらも、シエルは一行を魔王城の客間へと案内する。
今日集まったのはユイト、イリーナ、リア、オーレリアンと、俺。
ピニョはイルダたち買い出し組に混ざって何処かへ行ってしまった。
一方シエルの方は、何人かのメイドを残して他の魔族たちはいつも通り自由に街へ繰り出している。
全員が客間に思い思いに腰を落ち着け、シエルが人数分の茶菓子をメイドへ頼む。
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