第31話 偽り

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 ちょっと待て、と俺はツッコミをいれたかった。いや、実際口を開いた。  しかしすでに俺の話を聞いてくれる雰囲気ではない。  シエルもオーレリアンも、親しげに世間話を始めてしまった。  もういい。  俺の扱いなんてそんなものなのだ。実際。  別に構って欲しいわけじゃないし。死にかけたって、俺の生死なんて紅茶より価値がないんだ、どうせ。  メソメソしそうな所に、メイド長のローザがやって来た。早速オーレリアンが持ち込んだ紅茶を淹れて来たようだ。  それらを全員に給仕して、ローザはすごすごと引き下がる。お茶請けに出された砂糖菓子は、甘い匂いを放っていて。  なんて惨めなのだろうか。  そんでもって、紅茶も菓子も美味い。  俺の隣に座るイリーナが、苦笑いしながらそっと肩を叩いた。  それが余計に俺を惨めにするとは考えもせずに。
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