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「レ、レオ様っ!?」
「なんだ?」
金髪の男が空を見上げる。視線より少し上に、白銀の鱗を持つドラゴンがいた。
ドラゴンといっても、山ほどの大きさがあるわけではない。少し大きめの猫くらいの大きさだ。
「やりすぎという言葉をご存知ですか…?」
「加減を知らんバカな奴に使う言葉だろ?」
「……レオ様はご自身がそうなんだとは思わないんですか」
ドラゴンは、鋭い牙の並んだ凶暴な口から、若干の煙を吐き出した。
それは人間でいうところの溜息だった。
「俺が?」
「はいです」
「……フン」
と言ったきり、金髪の男は黙ってしまった。
ドラゴンはまたも溜息を吐き、レオが焼き払った木々を見やった。
鬱蒼と茂った木々が、一箇所だけごっそりと燃え尽きている。放射線状に広がるその向こう、森が終わるところまで見渡せる。
協会に提出する報告書はどうしよう、とか、森の所有者への説明はどうしよう、とか、ドラゴンはもはやそんな事で頭が一杯だった。
頭を抱えるドラゴンは、その時、自身が今日最大のミスを犯したことに気付くのが遅れた。
気付いた時には、目の前にレオの姿はなかった。
キョロキョロと辺りを見回して、ドラゴンは「あ、詰んだ」と思った。
「お前さ」
レオは、檻に閉じ込められ、恐怖に震える女性の前にいた。そして静かに、はっきりと声をかける。
「ブスなのに魔族に拐われて大変だな。俺が魔族ならお前は拐わねぇわ」
ドラゴンは一瞬にして頭が真っ白になった。
「大丈夫?」とか、「ケガはない?」とかなら良かった。もしくは黙っていた方がマシだった。
なのに、である。
「お前みたいなブスは、魔族に買われた方がある意味幸せだったんじゃね?人間に貰い手あんの?」
などと、追い討ちをかける。
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