第1話 クビになった

2/8
3568人が本棚に入れています
本棚に追加
/1641ページ
 ピニョは俺のヨレヨレのワイシャツを引っ張る。今日はヤケに押しが強い。 「なんだよ?そんなに重要ななんかがあんのか?」 「議会はいつも重要ですけど!!今日はヤバイです!!」  ヤバいヤバい。いつもヤバいと言うが、そんなにヤバかったことなんてこれまで一度もない。 「な、なんですそのヤル気の無い顔は?」 「別に。行けばいいんだろ、行けば」 「わかれば良いのです!!」  フンスと鼻を鳴らすピニョに、されるがままに着替えをする。ピニョが前日に用意した真っ直ぐの白いシャツに黒いスラックス。どんなに歩いても壊れないような頑丈な軍靴を履く。そこに、本来は漆黒のローブを羽織る。  が、俺はそのいかにも陰気臭いジジィみたいなローブが嫌いだ。 「レオ様!!ローブ、ローブをお忘れです!!」 「はあ?いらねぇよんなもん。ダセェし」 「協会に属する正規魔術師の証です!」 「俺くらいになるとローブなんかなくても魔術師だってわかんだよ。多分」  適当にピニョをあしらって、会議室に向かうべく部屋を出る。  その後を、ピニョがローブを抱えて追いかけてくる。パタパタ走る足音が耳障りだ。 「レ、レオ様っ、少々おまっ、お待ちをっ!!」  完全に無視して足を動かす。宿舎を出れば、すぐそこに魔術師協会本部がある。  本部は左右均等な四階建ての白い建物で、会議室…中でも、協会のトップ12人のみが入れる会議室は四階中央だ。  ピニョを置き去りにして、早足に四階までの階段を上がる。会議室の両開きの扉を思っクソ押し開けた。
/1641ページ

最初のコメントを投稿しよう!