第0話 『金獅子の魔術師』

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第0話 『金獅子の魔術師』

 ゲヒャハハハ、と耳障りな笑い声が響く鬱蒼とした森の中。  焚き火を囲むのは、人間よりも一回り以上の体躯をもつ魔族だ。筋骨隆々、顔面には豚の鼻のようなものがついていて、眼は小さく耳はとんがっている。  人々が恐る醜悪な見た目の魔族が三人。 「ったくよぉ、こんなちょろい商売があんならもっとはやく手ェ出しときゃよかったぜ」 「だなぁ。人間なんてそこいら中にいるし、捕まえるのも楽だからなぁ」  豚鼻をグヒグヒ言わせながら、戦利品を眺めて酒を飲む。 「にしても貧相な女だなぁ。これじゃあんまり良い値がつかんかもしれんな」  そう言って、豚鼻のひとりが戦利品の入った荷馬車へと近付く。荷馬車は檻になっていて、その中にひとりの女がいた。  女は確かに、栄養失調気味の骨張った身体であり、肌艶も良くはない。ただ、もう少し肉がつけば、それなりに容姿は良いかもしれない。 「まあでも、金になるんならなんでもいいけどなぁ」 「間違いねぇ!」  ギャハハハハハ、と、またも響く笑い声。  檻の中の女は、恐怖に震えて声も出ない様子だ。 「俺ならそんな女に金は出さないけどな」  急に、仲間以外の声がして、豚鼻達は飛び上がった。焚き火を囲む仲間の、いつのまにかそこに金髪の若い人間の男がいた。  まるで、あれ?オレら最初から四人だったっけ?と疑いたくなるくらいに、自然とそこに混ざっている。 「お、お前っ!いつからそこにいる!?」  得体の知れない存在に、思わずどうでもいい言葉を発する豚鼻に、金の髪を揺らす男は答える。
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