ありがとう

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ありがとう

「あっ……うっ……う」 「んっ……いいな。今日もトカプチの中は温かいな」 「うっ……っ……!」  シロツメクサの野原をベッドに、俺はロウに抱かれている。  この1年、何度も何度も繰り返された行為。 「あうっ……」 「ハッハッ──」  ロウの息遣いがどんどん上がって来る。  こういう時のロウは獣本来の動きに近くなっていくのか。  半獣の時も完獣の時も、こうやって激しく揺さぶられた。  でも……獣のモフモフの胸元の毛並みだけは、どんな姿になっても変わらない。最初は凍っていて冷たくて嫌だったのに、今はまるで羽毛のように俺の顔や胸にあたるだけで、くすぐったくも……気持ちいい。  やがて一度中で溢れる程出されると、躰が栄養をどんどん吸収していくのを内部に感じ、満ち足りた気分になる。  赤ちゃん……宿るかな。今度こそ……  幸運のクローバーが見守る中で、今日も生命を繋ぐ営みを繰り返す。  ロウが俺の胸から溢れる乳を吸い上げると、やっぱりいつものように口からも摂取したくなって、ひな鳥のように口をパクパクと開けてしまう。 「欲しい……」 「ふっ、まだ足りないのか」 「う……だって」 「わかった。待ってろ」  今度は口腔内に……白濁の液体をたっぷりと注がれた。 「可愛いよ、オレのトカプチ」  俺の乳とロウの精液が混ざり合った極上の味に、うっとりとしてしまう。 「やっぱり美味しいな……お前の」  どんな人間の食事よりも魅力的で、ダイレクトに躰に響き、生きる糧となる。 「オレもだ。オレの躰はトカプチで出来ていて、トカプチの躰はオレで出来ているようだな、もう──」 「本当にそうだ。お前が好きだよ。ロウ。俺達はふたりで一つの生き物になっていく……」 「そうだ。俺達は離れない」  そのまま二人は重なりあって、胸と口を啄み合って、じゃれ合っていく。    背中にあたる大地の熱が、また一℃上昇したような気がする。  あぁ本当に明るい太陽の光を浴びながら、お前と営めるなんて夢のようだ。 「うっ……」 「何故泣く?」 「ロウ……お前が好きすぎて困るよ」 「オレもだ。トカプチがいない人生なんて考えられない」  俺はまだ17歳……  17年しか生きていないのに、涙が出る程好きになる相手と巡りあえて幸せだよ。  この先もずっとずっと一緒にいよう。  願わくば、お前に似た子供をもっともっと授かって、お前の家族を増やしてやりたい。 贅沢な悩みかな。 「少し休め……人の躰の方が負担が大きい。それに少しじっとしている方が赤ん坊ができやすいかも」 「ん……そうだね。さすがに疲れたよ。でも満ち足りた……ありがとう」  逞しいロウの躰に包まれて、少しだけ転寝しよう。 「トカプチ……ありがとう」  ロウの低い声が心地よく響く。  ロウが何度も何度も、俺の髪を撫でてくれる。  もうお前の手は俺を傷つけない……  まるで毛並みを整えるように優しい指使いで、気持ちいいよ。    
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