なかないで

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なかないで

「おいっトカプチ、見ろ!」  ロウに抱かれまくって疲れ果て、草原でウトウトしていると、揺り起こされた。    ロウは牧草を食べていたはずの乳牛を指さしていた。 「ん……なに?」  見ると……牛同士も激しく交尾しているじゃないか! 驚いた!   雄牛が雌牛の背中に乗りかかり尻に向かって激しく上下している。  交尾って……動物の生殖行為のことで、自分の子孫を残すという全ての動物においての最大の目的、生存理由だと学校では習ったけれども、直接見るのは初めてなので赤面してしまった。  それにしてもアペがくれた雄と雌の番の子牛も、すっかり成長したってわけか。もしかして栄養たっぷりの牧草を食べて、一気に目覚めたのかな。   「人も動物も同じだな……」 「あぁ」  客観的に見るとやっぱり恥ずかしいな。  さっきまでの俺達みたいだ。  獣じみた姿でロウに思いっきり突かれて喘いでいた自分を思い出し、頬が赤くなるのを感じた。 「あっ!もしかして」 「そうだ。きっと牛たちにも、じきに赤ん坊が出来るだろう」 「出産したら乳が出るようになるって母さんが言っていたよ! 待ち遠しいな。ずっと成長を待っていた。牛乳を搾れるようになるのをさ」 「オレたちも、もう一度するか」 「えっ、また?」 「あてられた」 「牛に?」 「ダメか」 「うっ」  ロウにガバッと抱きしめられ、狼狽えてしまう。すると泣き声が聴こえてきた。 「ふっ、ふえっ……」 「わっ起きたのか」  俺の声でトイが起きてしまったようだ。 「起きなきゃっ」  まだ俺も素っ裸だったので、慌てて服を着た。  ロウの爪先が丸くなってから服を破かなくなったので助かるな。前は営みの度に生地が引き裂かれボロボロになって、服の在庫が追い付かなくて大変だったからさ! 「ロウもほら、これ、巻けよ!」  それからロウにも腰布を巻かせる。もういい加減人に近づいたのだから服を着ろといつも言っているのに、まだ慣れないらしい。でもさ、それって俺が恥ずかしいんだよ。目のやり場の困るから、やっぱり服は着て欲しいよ。 「トーイ、ちょっと待って」  ところが……寝起きのトイの機嫌はいつになく悪く、エーンエーンと泣きじゃくっていた。 「どうした?」 「ぐすっ、ぐすっ」 「どうしたんだよ。俺達なら、ここにいるぞ」  トイの瞳は不安そうに揺れていた。いつも無邪気な子なのに、どうしたのかと、ロウと顔を見合わせ悩んでしまった。  トイは俺とロウに手を伸ばし、まるでトイが俺たちを抱くようにくっついて来た。 「ママぁ、パパぁ、いっちゃいやあああ」 「どうした? 俺たちはちゃんとここにいるよ。だから泣かないで」    しばらく泣いた後は今度はお腹が空いた攻撃だ。俺の乳を与えようにも顔を背け、イヤイヤと首を横に振る。 「おっぱいイヤ! ちがうもんっ」  そうか、なんだかショックだが、人間の子供はいつまでもおっぱいを飲まないのだから自然な摂理なのだろう。 「トカプチ、さっき言っていたジャガイモってこれか」  ロウが土の中を掘って、ゴロゴロとしたジャガイモを掘り出して見せてくれた。 「そうだよ!それがジャガイモだよ!」 「これで何かトイが喜ぶものを作ってみてはどうだ?」 「そうか、そうだな!」  こういう時のロウの顔は野性味を帯びていて、見惚れる程カッコいい!    
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