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夜明け ~プロローグ~
夜明け――
太陽の光が、大地を黄金色に輝かせるひと時が好きだ。
岩壁にもたれてその光景を眺めていると、トカプチが目を擦りながら、起きてきた。
「ん……ロウ、どうした? 早いな」
「あぁ綺麗だなと思って」
「眩しいよ」
「ほら見てみろ。青い草があんなに育って、風に棚引いているぞ」
「本当だ! よかったな」
「あぁ」
頬を上気して喜ぶトカプチの顔は、若さで満ちていた。
可愛いオレのトカプチは、オレの永遠の伴侶だ。
お前の16歳の誕生日に出逢い、凍る土地に無理やり攫ってきてしまったのに、オレを心から愛してくれた愛おしい存在だ。
「ロウ、牧草が青々しているよ。なぁそろそろ牛を飼えるかな」
「そうだな。今は1頭しかいないが、増やしてみるか」
「やった! なぁ沢山の乳が取れるようになったら、チーズを作らないか」
「あぁいいな。お前は作れるのか」
「いや、でも俺の村では作っていたよ。知らないのなら、習えばいい」
今まで知らないことが何なのかを……オレは知らなかった。
そうか……知らないなら……一から習えばいいのか。
トカプチの言葉はいつもオレに力を与えてくれる。
ずっとひとりで生きてきたせいで、何が正しくて何が悪いのかが分からなかったオレを導いてくれる。
「トイは?」
「まだ眠っているよ。トイは最近夜更かしになって、その分朝起きてこないから困るよ」
「じゃあ先に食事をさせてくれないか」
「あぁ、そうだな」
この国には、まだ誰もいない。他の人間や狼はいない。いるのは半獣のオレと人間のトカプチとやはり半獣の息子のトイだけだった。
「こっちだ」
トカプチを岩場の外に吊るしたハンモックの中にドサッと押し込める。
「わっここで!?なんだか照れるよ」
「なぜだ?」
「だってここは……前に両親が『シタ』とこ……っ」
「あからさまに言うな。もう一年前だ」
「でもっ、ここで母さんは俺の妹のノンノ(アイヌ語で花を意味する)を授かったから」
「照れ臭いのか」
「それは……まぁね」
話しながらも、トカプチの寝間着の紐を解き、胸元を遠慮なく露わにしていく。
「わ、手早いな。本当に……人の手は厄介だ」
「そうか。オレは気に入っているが。こんなことも出来るし」
17歳になってもまだ少年体型のままのトカプチの白い胸。そこに実る熟れた果実に舌を這わせ、口に含むとじゅわっと乳白色の液体が飛び散った。
「朝は特によく出るな。相変わらず美味いぞ」
「もうっ、だからいちいち言うなよ、恥ずかしいから」
朝一番の乳は濃くて量も多い。
オレは尖りを唇で扱きながら熱心に吸い上げていく。
「あっ……あぁ。もう……飲み……過ぎだ。トイの分も残せよ」
「ふっ、トイはそろそろ乳離れしないとな」
「あ……うっ……う」
****
あとがき(不要な方はスルーで)
こんにちは 志生帆海です。
長らくお待たせしてしまい申し訳ありません。
いよいよ新連載のスタートです!!
ちょうど『Birth』の一年後の話になります。
『Grow』とは(成長する・育つ・大きくなるという意味)
深く結ばれたトカプチとロウ、そして一人息子のトイ、三人のライフを再び……
プロローグは『Birth』の最後に載せた予告とほぼ同文です。
こちらは不定期連載となりますが、表紙を作って連載をしっかりスタートさせないと、いつまでも書かないように気がして……どうか気長にゆっくりお付き合いくださると嬉しいです。どうぞよろしくお願いします。
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